異郷に出会って、謙虚にそして豊かに生きてほしい

 多分、息子たちは大きくなってどこかの国に行ったら「パースってどこ」とか、「オーストラリア、遠いね!」とか言われることもあるだろうし、アフリカの砂漠や香港の市場に行けばびっくりするだろう。それはとても豊かな経験だ。彼らはすでに、東京のせわしない生活も、パースののびのびした生活も楽しんでいる。この先そのどちらとも違う環境に出会って「ああ自分は世界をちっとも知らなかった」と思う体験は、彼らを謙虚にし、世界が面白いことに満ちていることを教えてくれるだろう。

 自分にとっての故郷がだれかにとっては異郷であるというごく当たり前のことですら忘れがちになるのだから、本当に人は自己中心的にできている。

 ワルシャワっ子の彼女との会話は、「住めば都」は、どこであれ、暮らせばそのうち順応して、自分にとって一番快適な場所になるさ! という意味もあるけど、住んでる場所が一番だと思い込んで、他を僻地扱いする傲慢さは、誰の中にも潜んでいるよ! という警句とも言えるな、と自らを戒めるいい機会となったのであった。

 岩波ジュニア新書から新刊「屈折万歳!」を出版しました。表紙は五月女ケイ子さん。なかなか自分を肯定できない大人の皆さんにも!
内容/「どこにも居場所がない」「自分のことを好きになれない…」と悩む10代は多い。著者もまた人との距離をつかめず、親との関係もうまくいかず、学校でも就職したテレビ局でも空回りしては落ち込む日々を送っていた。そんな自らの屈折体験をふまえ、「いろいろあるけど人生はそう捨てたもんじゃないよ」と悩める10代にエールを送る。