2024年完成予定の巨大望遠鏡が地球外生命の謎を解くかも

 はるかかなたの惑星の大きさや温度を推定できるというのは驚きですが、生命の存在を判断する材料としてはまだまだ不十分。私達が地球上に生きていられるのは、水や空気はもちろん、例えば太陽からの紫外線を吸収するオゾン層の存在など、他にもたくさんの要素に支えられてのことです。そこに生命が存在する可能性をより高い精度で推定するには、その惑星にどんな物質が存在するかを調べる必要があります。

 「見えもしない惑星なのに、そんなことできるの?」と思ってしまいますが、臼田-佐藤さんは「もうすぐ可能になるかもしれません」とほほえみます。

 「太陽の光をプリズムで分光すると、虹と同じ七色の光の帯(スペクトル)が見られます。このとき光の帯の中に現れる黒い線(暗線)を調べると、太陽の表面にどんな元素があるかが分かります。同じことは遠くの恒星でもできますが、自ら光を出さない惑星では今のところ無理。惑星が恒星の前を横切るときのスペクトルの変化から惑星の大気の成分を調べようという計画もありますが、現存する望遠鏡ではそのために必要な光を十分に集めることができません。しかし、現在5カ国(日本、アメリカ、カナダ、中国、インド)の国際協力でハワイに建設されている口径30mの望遠鏡(TMT)が完成すると、系外惑星の大気スペクトル分析ができると期待されています。そこが生物の生きていける環境かどうかを判断できるようになるかもしれません。TMTは2024年に完成する予定です」

 ここで注意したいのは、一般に言われるハビタブルゾーンは、あくまで地球上の生命が住める場所だということ。臼田-佐藤さんは、広い宇宙には私達とは違う仕組みで命をつないでいる生き物が存在する可能性もあると考えています。

 「例えば、土星の衛星タイタンではメタンやエタンといった物質が、地球における水のように循環していると考えられています。メタンやエタンを水のように利用する生物がそこに住んでいる可能性もゼロとは言いきれないでしょう

 ―― 後編は「地球外生命に会える可能性はある?」というお話です。

(取材・文/手代木建)