「日本は制度が充実しているし、役所などの公共機関の対応が素晴らしい」と米国在住で共働き子育てをする藤井美穂さんは言う。アメリカでの産休、育休はどんなものなのか。現在進行形レポートでお届けします。

 日本に帰国した際、いつも感動することがある。それは、市役所や区役所の対応の良さだ。
 アメリカの政府が運営している役所は、とにかく対応が雑だ。

電話に出られないと「育児手当」がもらえない!?

 出産前、日本でいう「育児休業給付金」のような手当(以下、「育児手当」と呼ぶことにする)について調べようとしたが、政府機関に質問をしたくても電話がつながらない。サポートメールの宛先は本当に分かりにくいところに記載されてあり、メールをしてももちろん返事もない。市役所のような地域の身近な機関はアメリカにはないので、困ったときに気軽に聞きに行く先もない。

 日本では会社(人事)が代わりに手続きをやってくれるところもあると聞くが、アメリカではすべて自己責任。自分が手続きをしないともらえない。

育児手当のすべての申請はEDDのウェブサイトでできるが、一歩間違えるとややこしいことになる
育児手当のすべての申請はEDDのウェブサイトでできるが、一歩間違えるとややこしいことになる

 今回、実は州の「育児手当」を受けるに当たり、私が申請した書類に不備があったため、EDD事務所(Employment Development Department)から電話連絡があった。EDDとはつまり、日本でいうと社会保険事務局みたいなものだろうか。

 1回目の電話は取ることができずに、留守番電話に「申請書類について質問があるので、また折り返し電話します」という内容だった。

 2回目、またもや電話を取り逃がした際、留守番電話には「次の電話が最後の電話です。もし次の電話に出られなかった場合は今回申請した内容は取り消しになります」という内容のメッセージが入っていた。

 焦った私はすぐに私は電話を折り返したが、代表電話にかかってしまい、かつ代表電話の録音メッセージはいつも「この時間帯はとても忙しい時間帯であり、既に本日受けられる電話の件数は上限を超えたので、後日電話をしてください」という内容で切れてしまう。翌日オフィスが開く時間に電話をしたが、人気コンサートのチケット直通電話並につながらず、つながったと思ったらまた同じメッセージが流れた。私に残された選択肢は、「最終警告」となった3回目の電話を何が何でも取るしかなかった。

 しばらくして3回目の電話がかかってきた。今回は何が何でも取らなければ……と思ったので、すぐに電話に出た。

 EDD:「いくつか申請書類について質問があります。会社を休み始めたのはいつからですか?」
 私:「出産をする2週間前です」

 EDD:「会社からは有給はもらっていましたか?」
 私:「いえ、有給は使わず、すぐに産休制度を使いたいと思います」
 EDD:「申請書類の日程と産休を取り始めた日程が違うのですが、どういうことですか?」

 実は、私が書類を提出したのは出産後しばらく経ってからで、休みを取り始めた日程について少々曖昧だったため、申請した日付が1日、2日ずれていたのだ。 5分ほど説明をし、なんとか日程について理解をしてもらえた。

 「分かりました。しばらくしたら産休時の『育児手当』用のデビットカードを送りますので、今しばらくお待ちください」

 その後すぐに「育児手当」のお金が入金されるデビットカードが送られてきた。今回電話に出られなかったら、「育児手当」がもしかしたら支給されなかったかと思うと、ちょっとぞっとする。