カリフォルニアでは、「育児手当」が保障されている期間は16週

 アメリカは州によって育児制度が違ってくる。私が住んでいるのはロサンゼルスなので、カリフォルニア州独自の制度による育児制度を利用できる。カリフォルニア州ではどうやら、妊婦・出産後の働くお母さんのための権利は大きく2つの種類に別れるようだ。

 一つ目は、職と職の立場を守るための権利、PDL(Pregnancy Disability Leave Law)、FMLA(Family Medical Leave Act)とCFRA(California Family Rights Act)という2つの法律が設けられている。

 もう一つは、出産前後に「育児手当」をもらう権利、これはSDI(State Disability Insurance)とPFL(Paid Family Leave)の2種類ある。

アメリカの育児制度を説明した図。私はこのチャートを見て初めて仕組みを理解することができた。(注:The California Work and Family Coalitionより)
アメリカの育児制度を説明した図。私はこのチャートを見て初めて仕組みを理解することができた。(注:The California Work and Family Coalitionより)

 PDLは最高で4ヵ月、FMLAは最高で12週間受けることができ、給与は保証しないが、職と職の立場を守り、また、会社で受けている保険なども職場にいなくても利用することができるという権利だ。

 CFRAはPDLとFMLAを使用したあと、更に休みを取りたいと思った際に活用できる制度で、出産後1年以内ならそこから更に12週間、職と職の立場が守られながら休みを取ることができる制度だ。

 つまり、「育児手当」が保障されている期間は16週、職場での立場や保険が保障されているのは、産前産後合わせて22週(約5カ月間)。会社は制度で保障されたこの間、休んでいる社員の職や立場を守る権利はあるが、それ以降休みを延長したい社員に対しては、ざっくり言うと、クビにすることもできちゃうというわけだ。

 「育児手当」はまず、SDIから支給してもらう必要がある。SDIは出産前4週間、出産後6週間分、給与の55%支給される手当。これをすべて支給してもらった後、更に休みを取りたい場合は、PFLを申請する。PFLは最高で6週間、やはり同じく給与の55%分を支給してくれる。

家庭の収支を考えて、夫は育休ではなく有給休暇を取得した

 ちなみにPFLは夫も申請し、取ることができる。いわゆる男性の育児休暇だ。申請するかしないかは各々の家庭次第。男性も女性と同じように権利や権限は保証されるが、給与も同じように55%しか受けることができない。

 アメリカでの生活は物価が安いように思われることがあるが、それは住んでいる地域によって異なる。大都会・ロサンゼルスでは物価が高い。私も仕事をしていないうえに、夫の給与が55%になってしまうと、死活問題だ。わが家は結局、私だけPFLを申請することにし、夫は2週間の有給休暇を取るだけにした。

 「米国の保活事情 日本の数倍もかかる保育料」で紹介したとおり、アメリカのデイケア(保育園)料金は高い。安い賃金で働いている家庭はデイケア代が支払えない。すると、親のどちらか、あるいは家族の誰かが、子どもを自宅で見ることになる。

 産後に長く休んでいると、次に仕事を始めるときに給与が安くなったり、キャリアアップに不利になったりするため、働いた分だけデイケア代に消えたとしても子どもを預けて仕事をしている共働き家庭が多い。

 私が入っているFacebookのママコミュニティでは、「デイケア代を支払うと給与がほとんど消えちゃうんだけど、みんなどうしてるの?」という質問がよく交わされる。多くのワーキングマザーが悩んでいるテーマだ。