宇宙をテーマにした組曲で伝えたかったものとは

 オーケストラには様々な楽器が使用されていますが、音楽に関わったことがないと、どれが何の楽器なのか、曲の中でどんなパートを担当しているのかが分かりません。

 そんなかゆいところにも手が届くような解説をしてくれるのが、今回のコンサート。第1バイオリン、第2バイオリンがあること、チェロやコントラバスが低音部を担当していることなど、一つ一つの楽器について、井上さんが丁寧に解説していました。

 そして後半一曲目は、『惑星』の中で最も日本人になじみのある『木星』です。壮大でありながら、心にしみこんでくるような心地よいメロディーは、「快楽の神」という副題にぴったり。

 ここで再度、井上さんと月尾さんによるトークショーが入ります。途中で、井上さんが会場にいた宇宙兄さんズを発見し、ステージに呼び込む一幕も。宇宙兄さんズが午前中のワークショップの話をすると、井上さんが「ワークショップに参加した子ども、手を上げて!」と客席に呼びかけます。うれしそうに手を上げる子ども達。

 後半のトークショーで話題になったのは「一番はない」ということでした。一番音がいいと感じたホールはどこかという話題になったのですが、それに対する井上さんの答えは、それぞれに個性があり、どれが良い・悪い、何が一番優れているかどうかは意味のないことだというもの。それは音楽だけでなく、惑星にも人間にも共通するものだと、どんどん話は広がっていきます。

井上さんのダイナミックな指揮と、一糸乱れぬ演奏が圧巻
井上さんのダイナミックな指揮と、一糸乱れぬ演奏が圧巻

「“敷居が高い”というイメージがだいぶ払拭されました」

 そして、トークの話題は「終わり」へ。果てしなく続くように思われる宇宙ですが、それでもどこかに「果て」が存在するように、音楽も、人生も無限ではなく必ず終わります。だからこそ、今を楽しく、輝くように生きなければならない、という強いメッセージを伝え、残りの組曲『土星』『天王星』『海王星』を演奏し、本編は終了しました。

 大きな拍手の中で行われたアンコールで演奏された曲は、「星」つながりで、中島みゆきさんの『地上の星』。聞き慣れた曲も、オーケストラの演奏で、しかもコンサートホールで聴くと印象は一変します。コンサート後、話を聞いた子ども達からは、「知っていた『木星』を聴くことができてよかった」「最後の『地上の星』がよかった」と、慣れ親しんだ曲を特別な場所、いつもとは異なる演奏で聴くことができたのが、印象に残ったという答えが返ってきました。

 終わってみれば、子どもだけでなくパパやママも楽しんだ様子。午前中のワークショップから参加した人達に話を聞くと、「いつもは途中で飽きているのに、今回は最後まで聴いていたね」と子どもの成長を感じたママもいれば、「自分がコンサートに感じていた“敷居が高い”というイメージがだいぶ払拭されました」というパパも。子ども達だけでなく、親にとってもファミリーコンサートは新しいステップを踏み出すきっかけになるのかもしれません。

(取材・文/二川智南美(かみゆ) 写真/飯田えりか)