楽器から溢れ出す生の音の迫力

 まず序章として演奏されたのは、ヨーゼフ・シュトラウスの『天体の音楽』。優美なメロディーから徐々にテンポアップし、ゆかいな曲調になります。目の前で生の楽器から溢れ出す音の迫力はすさまじく、瞬く間に曲の世界に引き込まれるよう。スピーカーから再生される音ではなく、生の演奏を聴く素晴らしさが実感できます。子ども達もオーケストラをじっと見つめています。音だけでなく目でも楽しめるのが生のコンサートのいいところです。

 続けてホルストの組曲が始まりました。第一曲の『火星』は、まるで戦っているかのような激しい音律が、体の髄まで響きます。

 『火星』の演奏が終わったところで、特別ゲストとして東京大学名誉教授の月尾嘉男さんが舞台に登場。ここから井上さんと月尾さんの絶妙な掛け合いが始まります。クラシック曲を続けて演奏するのではなく、曲の間にトークを挟むことで、観客を飽きさせない工夫です。

 「なぜ惑星というの? ワクワクするから?」と面白おかしく問いかける井上さんに対し、「一点にとどまらずに位置を移動するさまを、惑っていると表現したからです」と真面目に回答する月尾さん。対照的なトークが笑いを誘います。

 組曲『惑星』は、太陽系の惑星をモチーフにしています。『火星――戦争の神』『金星――平和の神』といった副題からも分かるように、『火星』は、戦いの神・マルス、『金星』は平和と美の女神・ヴィーナスと、各惑星の名の由来となった神々をイメージしているのです。

 「平和がモチーフである」と井上さんによる説明があった『金星』は、まるで楽園に舞い降りたかのような壮麗なメロディーが響き渡ります。「翼のある使いの神」の副題がある『水星』は、妖精が跳ねているような、バイオリンの軽快なリズムが印象的。素晴らしい演奏と軽妙なトークを楽しんでいるうちにあっという間に前半は終了しました。

演奏の間には井上さんと月尾さんによる楽しいトークショー。後ろには、太陽系の惑星が映し出されています
演奏の間には井上さんと月尾さんによる楽しいトークショー。後ろには、太陽系の惑星が映し出されています