部下の才能と情熱を解き放つのが上司の役割

――結局、「意識が変わる」ってなかなか大変だと思うんです。それそれの会社で意識が変わった事例はありますか。

斎藤 2012年に新体制になったときに、人事制度も全部変えたんです。「役職は配役」だと言い切りまして、管理職の定義が「部下の才能と情熱を解き放つ」。もうそれに尽きますと。解き放てないのであれば、交代しますと。

 さらに、周りや部下からのフィードバックを始めた瞬間、やはり意識は変わりましたね。がらっと。ここまでフィードバックって、力あるんだなって思いました。「その人の成長を考えたフィードバックをしてください」というのはずっとメッセージしてます。「勇気づけられた」という人もいますし、目に見えて、活気が出てきました。

――では、ご自身の経験で、働き方に関する意識が変わったご経験はありますか。

斎藤 わたしの場合はがむしゃらに働いていて、子どもを2人生んだときに、働き方を強制的に変えなければいけない瞬間は、ありましたね。

 ただ、なんとかなってたんですが、新体制に変わって、リーダーシップスタイルまで、変えなければいけない瞬間があったきっかけは、やはり、フィードバックでした。

 女性が、ライフステージが変わっても活躍するためには、スペシャリストであらねばならぬ。そういう思いがあって、かなりがんばってしまった。そのときに、フィードバックで「孤高の人」と言われました。このときはとても悩みました。

 自分のリーダーシップスタイルとか、マネジメントの方法の変化があったからこそ、今のように、時間と場所が、バラバラのメンバー、いろんな働き方のメンバーがいるときに、自分の言葉でいろいろ話ができるようになったと、すごく感じています。

羽生 DUALのチームは、保育園や小学校低学年の子どもがいるお母さんがほとんどです。当然お迎えに行くので、夜会社で働く時間は制限されるわけですが、そんな中でも、良質のコンテンツを作り続けなければならない。そのときに、ある人に「プロセスチェックをしてみなさい」と言われたんです。

 プロジェクトを進める際のプロセスを洗い出しまして、「これはアウトソーシングするしかない」とか「優先順位を決めて削っちゃいましょう」とか、皆で考えたんです。そういうことも一方的に上司が部下に指令するのではなく、チームでチェックすると責任感も増します。なんとか今、健全に生産量は減らさず、むしろ一人一人がエンカレッジされて、活気よくやっていますよ。

「あなたのおかげで会社は変われた」と評価されるときが来る

――とはいえ、ヤフー、マイクロソフトは、結構な先進事例だと思うんですね。これから手を打とうとされてる組織、企業に向けてのメッセージをいただければ。

斎藤 答えのない世界だと思いますし、先を読む仕事だと思いますので、弊社も非常に多くの方にご意見を聞きました。今回のようなワークショップや座談会に参加して、新しい働き方を作っていくという気持ちを持つと、日本も変わるんじゃないかな。

佐藤 やや乱暴な言い方になりますが、やってみてから考えるのもアリだと思います。やる前にこれは無理とか、全社展開ができない、ではなく、できるところからまずやってみる。難しければまた考えて直していく。

 世代もバックグラウンドも様々な人が働いていますので、自分と部下や周りの人も同じだとは思わない。自分とは全く違う考え方や価値観を持っている人たちと一緒に働いているのだと、いつも思っていたほうがいいと思います。

羽生 DUALには、まだまだうまく行ってないんだけれど、ダイバーシティ推進室としては頑張っていきたいという問い合わせをたくさん頂きます。担当者の耳に一番初めに届くのは、反対派の声だと思います。「働き方をなぜ変えねばならないのか? 経営はうまくいくのか?」という反対勢力の人々ですね。

 ただ、負けないでほしい。よく社内を見回せば、「それを言ってくれるリーダーを待っていました!」という人が必ずいます。先進企業もそのような過程をたどっています。「あなたのおかげであのときこの会社は変われた」と評価されるときが来ます。ぜひ日本だけでなく多くの企業を研究して、推進していただければと思います。よいお取組みがあれば、DUALがすぐに取材に行きますよ(笑)。

 「これからの働き方」を考える必要性は、多くの企業が感じている。実際、JMAのKAIKAプロジェクト室によれば、今回の座談会や、JMAが7月~8月にかけて実施した「『働き方シフト』による組織づくり」ワークショップへの参加希望は非常に多かったという。

 企業間で取り組みを共有しながら、各社が目的を明確にして施策を進めていくこと、そして、「新しい働き方」について社会全体で考えていくことが、今後一層重要になることは間違いないだろう。

(文/福村美由紀 写真/菊池くらげ)

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