時間と場所がバラバラな部下をどう管理するか

――働き方も環境も、変わっている中で、マネジメントはどう変わっているのか、どんなスキルが必要になっているのでしょうか。

佐藤 リモートでどれだけ管理していくか、というところがとても重要になります。毎日顔を合わせているわけではない中で、部下の仕事をどう把握して、どうコミュニケーションを回しているのか、といった部分です。

 今年のテレワーク週間では、派遣社員の方の在宅勤務にもチャレンジしました。指揮命令者として、在宅勤務をしている派遣社員が今どんな仕事をしているのか、どんな課題があるからそれに取り組んでいるのかを把握しなければならない。

 やはり、多様な働き方に対するマネジメントは、あうんの呼吸ではなくて、きちんと仕事の内容、本質を見て評価、指導をしていくという公平性、そして様々な物事の明文化、ドキュメンテーションが大事ですね。

斎藤 時間と場所がバラバラの中でチームメンバーをマネジメントするということが、ますます管理職に求められている。これが一番の難しさなのかな、と感じています。

 時間も場所もバラバラな中で、一人一人を見て、方向を一つにしていく「ビジョン型のリーダーシップ」が必要になっています。

羽生 スイスのビジネススクールのIMD教授のギンカ・トーゲルさんは、日本の未来のマネジメントに着目されています。これから伸びる日本企業は、管理型マネジメント(経営目標を設定し、叱咤し、達成できかったらパニッシュという方法)ではなくて、育成型マネジメント(個性を伸ばし、チームワークを強めて、リーダーとして経営を改善・提案していく方法)ができる企業だと。今後、労働人口が減り少子高齢化が続いている日本の現場において、的を射ているなと感じました。

 「働きやすさ」というのは、今いる社員がラクできるということではありません。優秀な人材獲得の競争が激化している中、画一的な「モーレツ社員」のみを評価している企業からは人材が流出するでしょう。社長、経営層、チームリーダーらがマインドセットをして、個性が経営に貢献できるような雰囲気のある会社に、おのずと上質な人材が集まってくると思います。

「自分が甘い」ということを分からせることが重要

――テレワークなどで時間や場所が自由になることに向いてない人がいるんじゃないかという話があります。自立できない人ですね。

羽生 ワークライフバランスのコンサルタントの方がおっしゃっていたことですけど、日本は平等主義が多くて、会社対個人という、1対1の契約はまだ多くない。だから「3年間抱っこし放題ですよ」という制度に対し、「3年抱っこしなきゃいけないのか!?」となる。右向け右で。そうではなくて、育休は半年でOKな人、理由があって2年取る人など、会社は社員の「個」にもっと向き合ってもいい。欧米式といいますか、すべて同じルールで運用するのではなく、人間と能力をを見て契約するという考えがあってもいいんじゃないかと。もちろん手間暇はかかりますが、安直に1つのルールをあてはめさせようとするのに、現在は無理があるのだと思います。

斎藤 ぬるい人をどうするか。それを本人がちゃんと分かっているか、ということが、大きいと思っています。フィードバックとして、「ちゃんとあなたは甘いよね」「ぬるいよね」っていうことを言える環境、組織なのかどうか。

 分かっていると思うんですよ。自分が甘えているということが。それを、指摘されることが少ないので、変えずに行ってしまう。「あなたぬるいよね」ということを言うことで、「やっぱりよくないよね私たち」と、自浄作用が起こります。

佐藤 自由と自己規律は、非常に大事です。ぜひ、体験してみて、周りと話をしてみて、いま斎藤さんおっしゃったような、忌憚のないフィードバックを得られれば、ある程度、訓練で自己規律というものはついてくるのかなと思います。