働き方改革の先にはお客様がいる

――働き方改革は、「これ何のためにやってるんだっけ?」というのが、重要な問いかけとしてあります。何のためにやっているのか、というところをお話しいただけますか。

斎藤 何のために働いているのかというと、やはり、その先にはお客様がいる。忘れてしまいがちなので、そこはブレないようにしています。働きやすさの先には、お客様にびっくりするような創造的なサービスを提供できる、ということがあります。

 ヤフーでは、働き方改革の一つとして、「ベース」と呼ぶ、新しいワーキングプレースを作っています。びっくりするような創造的な仕事は、オフィスではないところで、生産性が上がったり、いい結果を生み出すことができると考え、石巻や白馬、北海道の美瑛に、サテライトオフィスを設けてます。

 働き方改革は、お客様のために行っているということを、企業は忘れないようにしないと、福利厚生的な話になってしまう。ライフステージに応じた働き方ができる、ということと会社としての成果・利益を出す。これを両方やらないといけないと考えます。

佐藤 まず多様な働き方の位置づけですが、あくまでも社員の福利厚生のためのものではない、ということを強調しています。

 社員一人一人が自分の生産性と効率性をいかに高めていくか。そのための「多様な働き方」という位置づけで、その延長線上には、テレワークや在宅勤務があります。もちろん、その更に先には、ビジネスを通してお客様や世の中に対して貢献をしていく、というのがあります。

羽生祥子日経DUAL編集長
羽生祥子日経DUAL編集長

羽生編集長 働き方改革を実践している先進企業に取材しますと、上手な人事部は「2種類」トークを用意しています。1つは、子育て社員など若手への「エンカレッジ系」の言葉ですね。制度を利用するだけではなく、君の働きに期待しているよという経営者からのキャリアアップの促進です。一方2つ目の説得フレーズは現在40~50代の昭和型の長時間労働を厭わない管理職向け。「働きやすく」なんてぬるいことを言っていると社業が傾きはしないかと抵抗する管理職、はっきり言って多いです。彼らへ「これから若くて良質な人材を確保するためには、24時間働けますか」の世界観は通用しないと、根気よく説得しつづけています。

 キレイ事ではすまないのが「働き方改革」です。各会社に経営目標があるのは当然で、それをクリアしてこそ、働き方改革だと思います。ダイバーシティや子育て支援制度を導入して、すんなり人事と現場が改善されている企業はないですね。