社員1人1人の才能と情熱を解き放つ

――自己紹介と、今取り組んでいることを教えてください。

ヤフーの斎藤由希子さん(以下、敬称略)  現在勤続17年目で、この業界では長くめずらしいほうと言われます。社員数が、入社当時は100人だったんですが、現在5000人を超えましたので、50倍になるという組織です。そんな中で、採用と人財育成と組織開発の専門部隊を担当しております。

 2012年に経営陣が変わり、役員の平均年齢も10歳若返りました。そのときに「変えるもの」「変えないもの」を決めました。変えないものは「ユーザーファースト」。世の中の課題をITで解決していく「課題解決エンジン」になることです。一方、変わったのは、経営方針です。『爆速経営』(蛯谷敏著、日経BP社刊)という本も出しましたが、多様性を尊重しながら、とにかく新しいことにチャレンジしていこう。こういう経営方針に変わりました。

 それに合わせて、社員を管理するというより、一人ひとりのやる気に寄り添う形で、「社員一人ひとりの才能と情熱を解き放つ」仕組みにしました。そのために、3年前に組織をマトリクス型に変え、ラインマネジャーは、1人ひとりに向き合わないといけない。そういう定義にしました。あくまでもラインマネジャーは「人財育成」にコミットします。

 また、「どこでもオフィス」という、海でも山でも、どこでも開発、商談、プレゼンができる、そういった仕組みにチャレンジしています。会議も、半年ごとに全部リセットして見直しをさせる。さらに、役職者、人数によって課金をしています。大人数、役職者が多い会議は、PL(損益計算書)に反映する。そういった形で強制的に“仕組み化”をしています。

 これまではオフィスで効率を上げるというやり方でしたが、「ベース」という、創造性を発揮できる場所、集中して仕事ができる場所も、オフィスの外に作っています。働き方は、ワークプレースも含めて変えていくものだ、と考えています。

ヤフーの斎藤由希子さん(ピープル・デベロップメント統括本部人財開発本部長)
ヤフーの斎藤由希子さん(ピープル・デベロップメント統括本部人財開発本部長)

日本マイクロソフトの佐藤千佳さん(以下敬称略) まず、マイクロソフトでは、多様な働き方について考えない日はないという、それくらい、真剣に取り組んでいます。

 いろいろな考え方、価値観、多様性を持つ社員を採用・育成し、そして長く貢献してもらい、その結果、企業を強くしていくという持続的な企業の成長とイノベーションが必要です。多様な考え方を持った人たちがぶつかり合ってそこから違いが生まれる、イノベーションが生まれる。そのような環境を実現するために、働き方改革に取り組んでいます。

 個々のニーズもAさんはこう、Bさんはこう、というより、Aさんの中に、またライフステージによってニーズも変わってくる。企業の中に様々なフレキシブルな対応策を持っていないと、それぞれの社員の力も引き出せませんし、健康に活躍していただくこともできない。そのあたりは、様々な取り組みをしています。

 マイクロソフトの平均年齢は現在40歳を超えています。育児を抱えるお母さん社員、お父さん社員ももちろんいますが、同じコンセプトと解決策の延長線上で、介護という問題に今直面しています。育児と仕事を両立してきた社員への対応策を介護にも応用できる点が多いです。

 多様性と言っても幅広く、今はジェンダーにかかわらず、LGBTにも取り組んでいます。おそらく今後は更に多様な働き方に対する対応が必要になってくると思います。

 正社員で長時間オフィスに通勤することが前提になっている働き方そのものも見直す必要があるかな、と感じています。

 今週「テレワーク週間」を実施していますが、昨日はコアデイでしたので、全社員が「オフィス以外のところで働いてみる」というコンセプトの元、自宅やカフェなど様々な場所で働きました。私も昨日は何カ所かテレワークを実践できる場所を巡ってきました。経験することで分かる便利さや、課題が見えるということもあります。こうした自分たちの経験やお客様の声をもとに、もっと多様な働き方を実現するために、私たちの会社だけではなく、世の中のために取り組んでいきたいと思います。

日本マイクロソフトの佐藤千佳さん(執行役人事本部長)
日本マイクロソフトの佐藤千佳さん(執行役人事本部長)