月収が20万円に満たない人も多い

 以上は平均値(average)ですが、収入の分布をとると職業ごとの特徴がもっとはっきりします。同じ厚労省資料に職業別の月収分布が載っていますので、これをグラフにしてみましょう。図1は、表2で黄色マークを付けた20の職業の月収分布図です。

 上のほうの職業を見ると、月収50万以上が大半を占めています。パイロットと大学教授は、9割以上が月収50万超です。歯科医師は内部分散がやや大きく、高収入層と低収入層に分化しています。平均値には表れない内部格差です。

 なお下に行くほど、月収が20万円に満たないブラックゾーンが広がってきます。保育士、介護職員、理容師・美容師は半分以上が月収20万未満となっています。全職業で見た場合の比重(24.2%)の倍以上です。想像はしていましたが、ここまで歪な構造になっていることには驚かされます。待遇の改善が急務です。とりわけ保育士や介護職員は、これからますます需要が高まってくるのですから。

高収入の職業に就くには、莫大な投資が必要

 今回の統計を見て、どのような感想を持たれたでしょうか。「やっぱり医者や大学の先生は稼げるな、わが子に薦めよう」と思われたかもしれませんが、これらの職業に就くには莫大な初期投資を要します

 例えば大学教員を志すならば、大学院博士課程まで行かないといけません。つまり30歳近くまで学生をやるのですが、その間はもちろん無給、それどころか授業料という対価を払う必要があります。この修業期間を終えてもポストにありつける保証はなく、35歳、40歳ごろまで待たされるというのもザラ。この場合、生涯所得という点で見たら普通のサラリーマンのほうが高くなるのでないでしょうか。

 医者やパイロットにしてもそう。私大の医学部やパイロット養成学校の学費が、目玉が飛び出るほど高額なのはよく知られています。高度専門職は、職業訓練に莫大な費用と時間を要するがゆえに、給与が高めに設定されているわけです。こういう面もご承知のうえで、先ほどの年収ランキング表を見ていただけたらと思います。

 次回は、子どもの肥満に関するお話です。肥満傾向児の割合を地域別に見ると、肥満をもたらす社会的要因のようなものが見えてきます。都道府県別、東京都内23区別という2段階のデータを観察することで、それを導き出してみようと思います。