女性社員が9割を占める通販化粧品会社のランクアップ。以前、「残業と事務作業を減らしてワーママの発想を生かす」「残業ほぼゼロで連続9年増収の化粧品ランクアップ社長」で紹介した通り、全社員がほぼ残業ゼロのため、一般社員と時短社員の間に大幅な労働時間の差は生じません。

さらに、社員のキャリアを6段階に分け「何ができれば評価されて次の段階へキャリアアップしていけるのか」を明確にした評価制度を整え、部署ごとに定められた多数の項目を「できる・できない」で明白に評価しているため、一般社員と時短社員の評価の差は全くないといいます。

「女性が活躍できる理想の会社」を目指して起業した岩崎裕美子社長にランクアップの明確な人事評価制度について伺います。

1~3年後の自分のキャリアを想像できる明確な人事評価制度

株式会社ランクアップの岩崎裕美子社長
株式会社ランクアップの岩崎裕美子社長

日経DUAL編集部 現在の人事評価制度はいつできたのでしょうか?

岩崎社長(以下、敬称略) 約3年前です。実は、2011年、全社員対象に行った、ある社内研修中に大事件が起きたんです。詳しくは後ほどお話ししますが。

 その結果、「人事評価制度を変えなくてはいけない」という課題が明確になり、急いで制度づくりに着手しました。翌年の2012年には今の人事評価制度の基になる制度が形になりました。

 その後、ある企業経営者から「日本人事経営研究室社長の山元さんの本が面白い」と聞いたんです。その方はその本を読んでご自分で社内の人事評価制度をつくったそうなのですが、私は著者の山元社長に相談して、弊社の制度をつくっていただくことにしました。あれが2年前のことです。

―― 制度の中身を教えてください。

岩崎 特徴的なのが「能力評価表」(下図参照)です。評価項目が非常に細かく具体的で、各自が振り返りやすい項目になっています。そして、その項目の内容を自分は達成できているか否かを、行動面から数値的に評価します。

 まずは「S1~3、L1、M1~2」の6段階の等級ごとに「求められる仕事レベル」を明記しています。一番下のグレードであるS1であれば「第三者の支援を受けながら業務を遂行する」。次のグレードであるS2であれば「自立的に業務を遂行・改善する」といった内容が書かれています。さらに、それぞれの等級に求められるスキルを、具体的に記入しています。

 例えば広報部であれば、S1なら「誰かにサポートしてもらいながら、プレスリリースを書ける」と書かれていますし、S2なら「一人でプレスリリースを書ける」かどうかという項目があります。

 能力評価表には、6つある等級すべての評価基準が詳しく書かれているため、社員達はその表を見るだけで「会社は将来こういうふうに私に成長していってほしいと思っているんだな」ということが手に取るように分かります。「〇年後までにこのスキルを身に付ければ、私はこの期にはこの等級にまで進めそうだ」というキャリアビジョンも具体的に想像することができるのです。

―― 評価項目がそこまで具体的なのですね。

岩崎 はい、具体的であることがポイントです。さらに、能力評価表には「成果」「能力」「情意」という三大項目も設けています。「能力」「情意」の項目には全社共通の目標を記載し、「成果」の項目には部署ごとに異なる目標を記載しています。

 この評価表を基に半期に1回、項目別に「A、B、C」の3段階で判定し、「Aを取ったら10点」などと点数付けをして、「合計120点」などといった具合に各社員の総合得点を算出します。もちろん評価表をやり取りするだけではなく、一人につき30分から1時間くらいの面談を行い、評価結果を伝えるとともに、今後のキャリアについてもじっくり話し合います。

ランクアップの能力評価表(一部抜粋)。広報部の事例。等級に応じて求められる仕事レベルと成果目標が具体的に記載されている
ランクアップの能力評価表(一部抜粋)。広報部の事例。等級に応じて求められる仕事レベルと成果目標が具体的に記載されている