宇宙というフィルターを通して新たな興味が湧き出てくる

 公演後、宇宙兄さんズに今回の感想をお伺いしました。

宇宙兄さんズ1号2号

小島俊介
1975年生。新潟県新潟市出身。宇宙飛行士の選抜試験に使われる閉鎖環境施設を利用した子ども向けプログラム開発に関わった。JAXA宇宙教育センター職員を経て、現在、公益財団法人日本宇宙少年団宇宙ホンモノ体験総括。また、編集者として、主に実験工作をテーマにした児童書の編集にも関わる。

小定弘和
1980年生。宮城県仙台市出身。「宇宙のお兄さん」として、JAXAとYAC(日本宇宙少年団)で放送しているインターネット番組『宇宙教育テレビ』や教育誌などへの出演を通して、宇宙の持つ魅力的な素材を利用した人材教育を実践している。JAXA宇宙教育センター職員を経て、現在、公益財団法人日本宇宙少年団の副事務局長として、社会教育現場や学校教育現場での宇宙教育活動の支援を行っている。

——今回のワークショップはいかがでしたか?

宇宙兄さんズの小島さん。編集者として実験工作をテーマとした編集にも携わる
宇宙兄さんズの小島さん。編集者として実験工作をテーマとした編集にも携わる

小島俊介さん(以下小島):とにかく、自分の問いかけに対して、子ども達の反応が非常に良かったですね。

小定弘和(以下小定):本当に! 「試験をはじめます」と言ったときのどよめきはすごかったですね。

小島:きっとイベントによく参加されているからだと思うんですが、みんな聞く姿勢がきちんとしているし、反応を返すのにも慣れているんだなと感じました。コミュニケーション能力が高い証拠ですね。宇宙飛行士として欠かせない大事な要素ですよ。

——宇宙と音楽というテーマはいかがでしたか?

小島:宇宙って真空ですよね。本当は音が聞こえないから、最初お話をいただいたときは、どれほどの材料が集まるか、実は心配だったんです(笑)。でも、調べて集めていくうちに、私達もこんなにたくさんあるのかと、びっくりしました。
 今回のワークショップで、音楽にもともと興味を持っている子もいたと思いますが、宇宙というこれまでとは全く異なる視点からのアプローチによって、宇宙はもちろん、音楽に対しても新たな興味ややる気が湧く点火剤になっていたら、大変うれしいです。

宇宙兄さんズの小定さん。インターネット番組や教育誌で宇宙についての魅力を分かりやすく伝えている
宇宙兄さんズの小定さん。インターネット番組や教育誌で宇宙についての魅力を分かりやすく伝えている

小定:以前に宇宙×チーズというテーマで講演をしたことがありましたが(笑)ようは、どんなものとでも掛け合わせることができるのが宇宙なんだと思います。宇宙というのは、人間も地球も、すべてを包括していますからね。今回は音楽でしたが、たとえどんなテーマでも、宇宙というフィルターを通して新たな発見や好奇心が生まれるのではないでしょうか。
 そして、宇宙を題材にすると、子どもはもちろん、親も知的好奇心を刺激されます。今回、お子さんだけでなく親御さんの反応も非常に良かったのですが、老若男女問わず楽しめるのが宇宙の素晴らしいところだと思います。

——来場者の中には「自由研究につながれば」という理由で来ていた方もいました。お二人が所属している宇宙少年団では、やはり宇宙をテーマに自由研究をしている人が多いですか?

小定:していますよ。例えば、水の力を使って飛ぶ水ロケットを作って、ロケットの重さ、発射の角度、水の量を調節して、どうすればもっとも遠くまで飛ぶかどうか実験をしている子がいました。水ロケットの全国大会が催されているので、それに合わせて熱心に研究していましたよ。

小島:他にも、流星群を観察して、いくつ流れ星を見ることができたか数えるのもいいと思います。また、7月23日に飛び立った油井亀美也宇宙飛行士が乗った宇宙ステーションは、明け方と夕方に陽光を反射して光るので、その様子を観察するのもおすすめです。子どもが小さいと一人では難しい場合もあるので、ぜひお父さん・お母さんが協力してあげてほしいですね。

 ワークショップ終了後、会場を後にした親子は、午後になると再びすみだトリフォニーホールに戻って来ました。ワークショップが行われた小ホールではなく、1801席もある大ホールです。そこで親子達を待っていたのは……。(後編に続きます)

(取材・文/二川智南美(かみゆ) 写真/飯田えりか)