2009年の夏、父チャールズと息子ショウのスコット親子は自転車で、北海道の宗谷岬から九州の佐多岬まで67日間の日本縦断の旅をしました。以来、2011年にはアイスランド、2012 年の夏にはヨーロッパを旅することになります。2013年にはロッキー山脈を越え、2014年にはニューヨーク市からナイアガラの滝まで往復するなど、スコット一家の冒険は続いています。

チャールズさんは日本での冒険から2年後、インテルを辞めて2011年より作家および冒険家としての活動に専念しています。それができているのは、妻エイコさんが安定した収入のある仕事を続けているおかげでもあります。

前回「子どもの『逆境に負けない力』を育む“冒険”とは?」では、冒険が逆境に立ち向かうレジリエンス(耐久力)を子どもの中に育てるという話を聞きました。後編では、大人にとっての冒険の効用と、絶妙なバランスを保っているように見えるスコット夫妻のコミュニケーション術などを伺いました。

リスクを取る強さは自分にはないと思っていた

日経DUAL編集部 ショウくんとの日本縦断の旅に出る前から、インテルを辞めようと決めていたのですか?

チャールズ・スコットさん(以下、チャールズ) 旅行を計画していた当初、インテルを辞めることは全く考えていませんでした。頭にあったのは、「息子と密な時間を共有できるような冒険をしたい」ということだけでした。

 そもそもこの旅をする前の私にとって、冒険すること自体が難しかったのです。それまでも、アイアンマン・トライアスロンなど肉体的な限界には挑戦していました。でも仕事に関しては、どちらかというとフォロワーで、会社という組織の中でうまくやろうとしていました。上司の指示に従い、会社の戦略に沿うように自分の目標を設定する、という具合に。

 今の私は、誰からの命令も受けていません。自分で大事だと思うことをやって、それをいかにうまくやるかを考え、自分の人生を完全にコントロールしているのです。ある意味、リスキーな生き方です。以前の私は、そんなリスキーな生き方をする強さは、自分にはないと考えていましたし、怖くもありました。

 でも日本縦断の旅を終えて、自分の中で何かが変わっているのを感じ、その変化を見続けたいと思ったのです。

チャールズ・スコットさん
チャールズ・スコットさん