「僕の成功なんて、誰も関心がない」

 妻から常々「“仕事をし過ぎないで!”と叱責を受ける」と話すのは、日経DUALの連載「イクメンアップデート中」でもおなじみの、お笑いコンビ「オリエンタルラジオ」の中田敦彦さんです。

 「僕はずっと成功しなきゃいけない、と考えてきて、常に自分を大きく見せよう、カッコよく見せよう、と頑張ってきました。受けた仕事は全力で取り組むし、ささいな妥協もできず、周りに対してもピリピリしていた部分があったと思います。でも、最近気付いたんです。僕の成功なんて、誰も関心がないな、と。それこそ妻だってそんなことには興味がない。収入よりも何よりも、妻が望んでいるのは僕が休むこと、家庭での時間を作ることだった。そのニーズをちゃんと把握して、応えることのほうが大事だと思いました」

 芸能界きってのイクメンとしても知られる中田さんですが、やはり仕事は超多忙。昨年は仕事を受ける際に金額面を優先して取捨選択し、収入を落とさずにプライベートの時間を作ろう、と試みました。しかし結果としてそれは失敗に終わったそうです。

 「金額が大きな仕事は、例えばCMの出演だったり、番組のMCであったりします。でもそうした仕事は撮影こそ特別に長いわけではありませんが、そこに至るまでの準備であったり、打ち合わせであったり、宣伝だったりと、付随する時間が非常に大きいんです。結果として、僕のプライベートの時間は全く増えませんでした。妻からも『どういうこと?』ってブーイングですよ。僕自身、収入が減らないこと、成功することにこだわり過ぎていた、と反省しました。

 妻は別に、僕にもっとお金を稼いできてほしいと思っているわけじゃないんです。自分が必要としているときに、家にいてほしい、家事や育児をサポートしてほしいと思っていた。それを僕は勝手に『収入を減らしちゃいけない』と思い込んで暴走していたんです。収入は普通でいい。極論を言えば、『僕や家族が食べられるパンがあればそれでいい』。自分が望むことは、大豪邸に住むことでも高級車を何台も所有することでもない。家族との普通の生活が送れれば、それでいいんだと気付かされました」

 1.0世代には、「生き残らなくてはいけない」「成功しなければならない」などの「~しなければならない」という思い込みを持つ人が多く見られます。それが自分一人で抱え込んだり、プレッシャーに押しつぶされたりすることにつながるのです。

 2018年は、もっと周りの人たちに頼りながら、ゆとりを持って軽やかに、自分の人生を楽しみながら仕事と家庭を両立させる、そんな2.0世代に進化していきませんか。

 次回以降、実際に1.0世代、2.0世代の方に集まっていただいた座談会をお送りしながら、どうすれば1.0世代の思い込み、抱え込みから脱出できるのか、中田さん、浜屋さんと共に考えていきます。

(取材・文/日経DUAL編集部 田中裕康、イメージカット/iStock)

中田敦彦

1982年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。大学在学中の2005年、お笑いコンビ・オリエンタルラジオとしてデビュー。デビュー直後に「武勇伝」のネタで大ブレイクを果たす。12年、タレントの福田萌と結婚し翌年女児が誕生する。『爆報! THE フライデー』『白熱ライブ ビビット』(ともにTBS)、『火曜サプライズ』『ヒルナンデス!』(ともに日テレ)など、多数のレギュラー番組を持つ。中田敦彦Twitter 

浜屋祐子

北海道出身。国際基督教大学教養学部卒業後、日本銀行に入行し経済調査を担当。その後、人材マネジメント領域に転じ、人事・組織コンサルティング、社会人向けの経営教育事業等に従事した後、東京大学大学院に進学。修士課程修了(学際情報学)後は、経営教育事業に携わるとともに、働く人の職場内外での学びを支援する研究と実践を続けている。共著に『育児は仕事の役に立つ』(光文社)など。