平均的な収入でも家事代行サービスを利用

 こうしたDUAL2.0世代について、「完全に当てはまると言い切れる人はまだ一握りでしょうが、こちら側に向かいつつある人は、私の実感としても増えているように感じます」と語るのは、『育児は仕事の役に立つ』(光文社)などの著書(中原淳・東京大学准教授との共著)を持ち、自身も小学生の一男一女のママである、リサーチャー・研究者の浜屋祐子さん。浜屋さんは共働き子育て世帯の調査、聞き取り、また講演やセミナーなどで各地に赴く中で、数多くのDUAL夫婦と接しています。

 「お会いする方の多くは、職場の環境やパートナーとの協力体制づくりなど、何かしらの課題を感じています。ただ、そこで諦めてしまわず、身の回りでできることから2.0世代的な在り方に近付こうと動き始める人たちが増えてきている、意識が変わってきているということは感じます。家事育児時間は、現在も圧倒的に妻のほうが多いことに変わりはありませんが、少なくとも“もっと家事や育児に関わりたい”と考える夫は増加しています。家事代行サービスなどのアウトソーシングについても、私が第一子を出産した12年前は『どこのセレブが使うの?』という遠い感じだったのが、今は一般的な会社勤めの身近な夫婦でも、利用することを普通の選択肢として視野に入れる方が増えてきました」

 実は浜屋さん自身、まさに「DUAL1.0世代の典型だった」とか。

 「今となってはなんだか気恥ずかしい話ですが、当時は家事も仕事も颯爽と完璧にこなすカッコいいワーママ像に憧れていました。第一子を出産して職場復帰した当時、夫は長時間労働で出張も多く、保育園の朝の送りくらいしか頼めない状況にありました。その他はほとんど私が平日の家事・育児の一切を引き受けていて、いわゆるワンオペに近い状態。それなのに、当時は夫や周囲の誰かに頼ろう、という考えはなかなか浮かびませんでしたね。頼むこと自体、上手に切り盛りできていないという自分のダメさを認めるようで抵抗があったし、全部一人でやったほうが、伝える手間も省けて早い、という考えもありました」

 今、当時の自身を振り返ると、「なんでも頑張って自分の力でやり遂げる」という“頑張り信仰”があったと浜屋さんは語ります。

 「私はちょうど団塊ジュニア世代なのですが、何かにつけて多くの同級生と競争を否応なしに迫られる中で、頑張って生き抜くんだ、という思いが強かったのだと思います。そんな団塊ジュニア世代の傾向が、1.0世代の考え方につながりやすい素地になったのかなとも思います」

 しかし、無理がたたって復帰半年で「もう限界!」とギブアップしてしまったという浜屋さん。パンクしてしまうまで、“頑張り信仰”の考え方は直らなかったとか。

 「家の中では常に何かに追いかけられているような状態で、仕事でも注意力を欠いて大きなミスをしてしまいました。これではダメだと思い、まず夫と話し合いました。話し合うというと聞こえがいいですが、要するにギブアップ宣言です。夫は私のそんな状態を見かねて、家事・育児をもっと引き受けてくれるようになりました。夫婦二人だけでは立ち行かないと悟って、家事の省力化につながる家電の導入や病児保育の契約なども進めました。その後、夫も私自身も、よりフレキシブルな勤務ができる会社に転職。今は特別な仕事が入らない限りは午後6時には自宅に帰る生活。夫もたいてい8時前には帰宅するので、家族そろって他愛もないお喋りをするような時間を毎日とれています

 限界を超えたことで、自分一人ですべてを解決しようとすることをやめた浜屋さん。まさに1.0世代から2.0世代に移行していったモデルケースと言えるでしょう。