住宅購入についての連載を執筆しているファイナンシャルプランナーの中嶋よしふみさんが、DUAL読者が抱えている「住宅ローンの悩み」に対してアドバイスします。第1回は「住宅ローンで生活が苦しい場合はどうすればいい?」です。

 先日行われた住宅ローンに関する日経DUALのアンケート(以下の記事「繰り上げ返済、DUAL家庭はどうしてる?」参照)では多数の回答が寄せられました。個人を特定できない形でご回答頂いたお悩みを拝読しましたが、住宅に関する非常にリアルな声が書かれていたこともあり、せっかくなのでこれにアドバイスする形にすると役に立つ記事になるのでは?と思いました。何回かのシリーズでお送りします。

 今回は「住宅ローンが生活を圧迫して大変」という声について取り上げます。例えばアンケートでは以下のような声が数多く寄せられていました。

「無理に組んだローンが生活を圧迫していて、借り換えで負担を減らそうとしたが審査に落ちた」

「悩んだ結果、高めの予算で家を買ったら当初の予定より返済額が多くなって返済が苦しい。しかも今後は車の買い替えと教育費の負担があるのでもっと大変になるかも……」

 読者の方の中にも恐らく住宅ローンの返済を負担に感じている方は少なくないでしょう。自分はこの連載でも、対面のレッスンや相談でも、相談者がこういった苦しい状況に陥らないようにアドバイスをしています。近著『住宅ローンのしあわせな借り方、返し方』で書いたことも同じです。

「貯金できていたから家を買っても大丈夫」という考え方は危険

 賃貸住まいで、子どもが生まれるまで毎年200万円の貯金ができていた夫婦がいたとします。これだけ貯金ができていれば、多少支出が増えても問題ないと「誤解」してしまう水準です。

 ですが、このご夫婦に子どもが生まれて家を買うとどういう状況になるのかというと、奥さまは産休・育休、あるいは時短勤務で収入が減り、子育て費用で支出は増え、そして住宅購入についても賃貸時よりも支出が増えています(ローンを組んだ後に賃貸時より支払い額が減る人はほとんどいません)。

 それぞれの影響を、奥さまの収入減少が年間100万円、子育て費用で年間50万円、住宅購入で年間50万円とすると、合計で金銭的なダメージは200万円となります。つまり、200万円貯金ができていた夫婦でも貯金額はゼロとなってしまうわけです。これぐらいのマイナスは十分あり得ます。貯金があまりできていない場合は赤字に陥る家庭も珍しくありません。

 しかもこれらの影響は収入減以外はずっと続き、子育て費用は成長するにつれて増加の一途をたどります。つまり「今までそれなりに貯金できていたから家を買っても大丈夫」という考えは誤解だと言えるわけです。

 一方、現在どれくらい貯金ができているかを見れば、育休・時短勤務などの収入減少、ローン返済や子育て費用などの支出増加と、これらの金銭的なダメージにどれくらい耐えられるのか把握できます。これを「バッファー」(緩衝剤)と呼びます。著書や過去の連載でも紹介した考え方ですが、事前にこのような計算をして無理のない予算でローンを組んでおけば、住宅ローンで家計が圧迫されることは本来ならばありません。ここまでは、家をこれから買う人に向けたアドバイスです。