ハッキリ言うと、今までのような生活はできません

 無駄は無いけど支出は削らないといけない……。これがどんな状況かというと「生活水準を下げる」という身もフタも無い説明になります。収入が減って支出が増えて、それでも貯金をするには(本人にとっては)必要な支出を削ることになるのですから、当然そうなります。

 これが痛みを伴うリストラです。リストラをすることになれば、もうこれまでのような生活はできません。食費を少し削ったり電気をこまめに消したり、といった程度で教育費の増加や収入の減少を賄えることはまずありませんから、仕方のないことです。一番削りやすい支出は、お小遣いやそれに近い支出(洋服代・化粧品代・旅行費・外食費・子どもの習い事代など)です

 他人から見れば、収入の高い人が例えば子どもに高価な習い事をさせて金銭的に厳しい、と困っている状況は滑稽に見えると思います。そんな無駄なことをやらせているからお金が足りないんだと見えるでしょう。ただ、本人は必要だと考えているからこそ習い事にお金を払っているのですから、無駄ではありませんし、止めさせることは痛みを伴うリストラです。

 無駄を削るという考え方には「ウチの支出には無駄が含まれているはず、無駄な支出を削るだけなら、今までの生活を変えずに貯金を増やすことができるはず」という虫のいい発想が含まれています。当然、そんなことはありません。投資の世界では「フリーランチは無い」と表現をしますが、リスクやデメリットがゼロで、リターンやメリットを享受することはできません。

共働きの家庭でお金が足りない状況は「生活水準」の問題

 リストラをする時に必ず考えてほしいことは支出の優先順位です。満遍なくアレもコレも少しずつ減らそう、という削り方はあまり良いやり方ではありません。また「○○をするにはいくら掛かってしまう……」という「受け身」の考え方もできればやめてください。何にお金を掛けたいのか、いくら掛けるべきか優先順位を付けて、メリハリのある支出構造にしてほしいと思います。

 もちろんどんな商品・サービスでも相場がありますので、一定水準までは「最低でも○○円は掛かってしまう」と考えることは仕方ありません。ただ、そういう場合でもそもそも6000万円のマンションや私立中学や高価な車は優先順位がそこまで高いのか? という根っこの部分から考え直してください。

 例えば自分が受ける相談で一番多いものは住宅購入ですが、「通勤に便利な場所にマンションを買いたい」「教育費にはお金を掛けたい」と、何にお金を使いたいのかハッキリしている相談者の方が多いと感じます。

 お金のかかる趣味はあまりなく、、車の保有率は1割程度と非常に低く(交通の便が良い場所に住んでいるので不要&忙しいので使わない)、タバコを吸う人はほぼゼロでお酒も飲み会に付き合う程度(お金を払って不健康になるなんてばからしいと思っている)と、優先順位が明確です。

 つまり「通勤に便利でなおかつ住みやすい場所に家を買う」ということで、仕事と子育ての優先順位を高くしようという意思決定ができているわけです。

 突然会社が傾くとか、急病で働けなくなったなど、想定外の収入減少に見舞われたような人を除けば、共働きの家庭でお金が足りない状況はほとんどのケースが生活水準の問題です。したがって、収入は低くないのに生活が苦しい、何かおかしい……と思ったら(ありもしない)無駄を削るとは考えずに、生活水準を下げる、そして支出の優先順位を見直す、という2本立てで、家計を構築し直してほしいと思います

 次回の記事では「住宅ローン金利の選び方」についてアドバイスします。

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