既に困ってる人はどうすればいい?

 それでは、既に家を買い、他の出費が重なって住宅ローンの負担が重くなってしまった人はどうすればいいのでしょうか

 冒頭に紹介した「借り換えで負担を減らそうとしたら断られてしまった」というケースは、収入が大幅に下落しているなど、家計の状況は案外深刻なのかもしれません。借り換えは新しい借入先にとっては新規の貸し出しと同じですから、条件に合わなくなっていれば当然借りることはできないからです。

 そこまでひどい状況ではなくとも「住宅ローン以外の支出額を考慮すると家計が苦しくなり、それまでのような余裕のある生活ができなくなってしまう」ということはどの家庭でも起こり得ます

 先ほど「バッファー」の説明をしましたが、それなりに貯金をできていた夫婦でも出産と住宅購入を境に状況が一変します。収入減少を出産前と比べて100万円としましたが、これがもっと大きい方もいます。過去の相談事例では、給料の高い会社で長時間労働をしていた方だと300万円くらい下がる方もいました。「フルタイムに復帰しても子どもが小さいうちは残業が今までのようにできない、もう以前のように稼ぐのは当面無理」という方もいました。

 住宅ローンが生活を圧迫している、というのは表面的な見方です。家を買う前と後では生活の環境が大きく変わります。これをライフステージと言いますが、ライフステージが変われば収入も支出も大きく変わることが本当の問題です

「無駄を削る」という発想は間違い

 では収支が悪化する状況を想定していなかった夫婦はどうしたら良いのでしょうか。収入は自分でコントロールできない以上、支出を減らさないといけないことは間違いありませんが、ここで陥ってしまうのが「無駄を削る」という発想です

 現在収支が悪化している人も、そうでない人も、自分がどれくらい無駄遣いをしているか考えてみてください。1円でも「無駄な支出」はありますか? 削ることができる支出は当然あると思いますが、それは「無駄」とは言いません。自分にとって必要だから、欲しいからお金を払って購入したり利用したりしているはずです。

 このように考えると、ほとんどの人が無駄な支出はしていないと思います。なぜなら購入の時点で「これは無駄な支出だ」と分かっているのなら、そもそもお金を払わないからです。お金を払っている以上は何かしら価値を得ているのですから、本当の無駄遣いはお金を捨てるくらいしかない、ということになります。