話す力より聞く力が大切な理由
W-L交渉の際、Aさんと同様にBさんは「私も欲しい」と自分の意見を言っているのに対し、W-W交渉時では、パターン1、パターン2ともにBさんはAさんに質問をしています。
パターン1では「半分じゃいや?」と聞くことで、Aさんの目的は「目の前のアップルパイを食べる」ことではなく「空腹を満たす」ことであると判明しました。ですから「目の前のアップルパイを食べる」という手段以外でも、目的を果たせることが分かりました。最終的にAさんとBさんはW-W交渉によって、当初よりたくさんのパイを食べることができ、一緒に料理し、交渉前より仲良しになりました。
パターン2では「アップルパイのどこが好き?」というBさんの質問によって、AさんとBさんはお互い違うモノを欲しがっていることが分かりました。そしてそれぞれが欲しいモノを最大限に享受し、交渉前より良い関係になったわけです。
お互いが自分の欲しいものばかりを言っていてはけんかになるだけです。まして食べ物の恨みは恐ろしいですから、W-L交渉後のAさんとBさんの関係がどうなったのか…不安です。まず相手がしたいこと、の下に隠れた感情や欲求を明らかにすることで、W-L交渉に陥りがちな対話も簡単にW-W交渉に変えることができるわけです。前回、交渉は話す力よりも聞く力が大事、と書いた意味がご理解いただけたでしょうか?
3ステップフレームワークを使って交渉すれば、どんな難しい対話も簡単にW-W交渉に変えることができます。
これだけ! です。
フレームワークを使う際、気を付けていただきたいポイントは3つです。
1. 常にポジティブマインド、ポジティブな表現で
誰だって批判されそうな質問には答えたくありませんし、ネガティブに捉えられそうな人に胸襟を開くことはできません。味方とは自分をポジティブに受け入れてくれる人、です。
2. 自分のあらゆる感情、欲求を受け入れましょう
日常の交渉においてやり取りするものは納期や商品の個数ではなく、自分を理解してもらえるか、相手は自分を認めているか、相手は自分の不安を緩和してくれるか、という感情です。つまり交渉を成功させるためには、自身の感情や欲求を正しく認識し、優先順位をつけて臨むことが重要です。「諦める」と「受け入れる」は違います。諦めずに自身の感情を受け入れてください。
3. 感情的になってはいけません! 交渉する「ヒト」と「コト」を分けて考えましょう。
売り言葉についカッとなって買い言葉が出てしまっては、せっかくのW-W交渉もその場でW-L、またはL-L(お互い負け)になってしまいます。
カッとなって自分の口が開いたら、その場で視線をそらして深呼吸です。そして、交渉すべき「コト」を、目の前の「ヒト」と分けて考えてみましょう。そうすることで、嫌いな人、腹が立つことを言う人に対しても冷静に交渉を進めることができます。そしてステップ1に戻って、相手の発言が「どんな感情(不安や怒り)」によって発せられたのか状況把握してみましょう。
次に、ステップごとに気を付けていただきたいポイントを紹介します。