ワーキングマザーの日常には、誰かと交渉することがいっぱいあります。妊娠したとき、育休から復帰するときは働き方について上司と「交渉」。家庭では夫に家事・育児分担を「交渉」。子どもが熱を出せば両親や義理の両親に「子どもを預かって…」と「交渉」。小早川優子さんとお伝えするこの連載では、ワーママがハッピーになる「交渉学」について、分かりやすくお伝えします。第1回では「交渉」とはどんなことか?についてご説明いたしました。第2回は、2種類の交渉について具体例を挙げて違いを紹介し、W-L(ウィンルーズ、勝ち負け)交渉をW-W(ウィンウィン、お互いが勝つ)交渉に変える方法、W-W交渉を作るポイントをご説明したいと思います。

 早速、W-L交渉の例題です。

 AさんとBさんは会社の同僚です。ある日外回りから夕方に会社に戻るとAさんはデスクの上に、同じ部署の同僚からのお土産のアップルパイが置いてあるのを見つけました。

Aさん 「おなかすいた! あ、アップルパイがある! 食べたい!」
Bさん 「私もおなかすいた! 私もアップルパイ食べたい!」
Aさん 「私が先に見つけたんだから、私のだよ」
Bさん 「これはお土産だよ、少なくとも半分こでしょ」
Aさん 「半分じゃいやだね、全部食べる。私のほうが体大きいし、年上だし」
Bさん 「私だって体大きいし、力仕事してる! 年齢は関係ない!」
Aさん 「私の机の上にあったのだから私のでしょう。それに先輩の言うことに従うのが社会の道理です!」
Bさん 「……」

 ケンカのような交渉ですね。どちらも自分の言い分が正しいと思い、説得することで必死ですが、結局W-L、Aさんが勝ち、Bさんが負ける、という結果になりました。

 では、このような交渉はどうしたらW-Wにできるでしょうか? 2つの例を示しましょう。

W-W交渉 パターン1

Aさん 「おなかすいた! あ、アップルパイがある! 食べたい!」
Bさん 「私もおなかすいた! 半分じゃいや?」
Aさん 「いや! だってすごくおなかすいたから」
Bさん 「おなかすいてるんだ。じゃあ、もう一個下の売店でアップルパイ買ってこようか」
Aさん 「アップルパイないかもしれないでしょ」
Bさん 「それならブルーベリーパイとかドーナツとか? ちなみに私のチェリーパイは最高においしいよ」
Aさん 「ドーナツも食べたいね、売店で買ってこよう! そしてBさんのチェリーパイ、食べてみたい」
Bさん 「じゃあ、帰りにうちに寄って一緒にチェリーパイ作らない?」
Aさん 「いいの? 今日はアップルパイもドーナツも食べられて、しかも一緒にチェリーパイが作れるなんてラッキーな日だ!」

W-W交渉 パターン2

Aさん 「おなかすいた! あ、アップルパイがある! 食べたい!」
Bさん 「私もおなかすいた! アップルパイのどこが好き?」
Aさん 「特にパイのサクサクがたまらない。サクサクあったらご飯いらないくらい」
Bさん 「そっち? じゃあ私は中のとろとろりんごのほうもらっていい? サクサクは全部食べていいから」
Aさん 「えー、サクサク全部もらっていいの? ラッキー」
Bさん 「お互い好きなところを食べられるね」

 以上がW-W交渉の典型的なパターンです。では、ここで問題。最初のW-L交渉をW-W交渉に変えたきっかけはどんな言葉でしょうか?