以前、「品川区長 小中一貫教育校に注力する理由」「品川区 2015年度、保育園は709人の定員増」で東京都品川区の濱野健区長インタビューを掲載しました。その品川区では、小中一貫教育や小学1年生からの「英語科」設置など、教育特区であることを生かした教育改革を進めています。中でも要注目なのは、銀行やコンビニエンスストアなど日常生活と変わらない店舗が立ち並ぶ「街」で小学校5年生が経済活動を行う「スチューデント・シティ」と、中学生(8年生)が「自分を大人だと想定して」生活設計を体験する「ファイナンス・パーク」です。こうした体験型経済学習の狙いはどこにあるのでしょう? 現場を訪ねました。

小中一貫校のワンフロアに「経済活動の場」を常設

 2006年から順次小中一貫教育を進めるなど、教育特区として学校教育制度の改革を試みている東京・品川区。品川区では、2011年に開校した品川区立小中一貫校品川学園(北品川)のワンフロアに体験型施設「スチューデント・シティ」「ファイナンス・パーク」を設けている。公立校の5年生、8年生(中学2年生)は必ず、ここでの経済活動を経験する。

品川区立小中一貫校品川学園にある体験型施設「スチューデント・シティ」
品川区立小中一貫校品川学園にある体験型施設「スチューデント・シティ」

 ある土曜日に行われた「スチューデント・シティ」。集まった小学校5年生を取り囲むのは、銀行、コンビニエンスストア、警備会社といった実店舗を模した企業ブース。施設は子ども達が仕事を体験する“職業体験型テーマパーク”風だが、ブースの中には「品川区役所」もある。

 子ども達は事前学習として8時間のカリキュラムで、帳簿記入の方法や収支の関係、接客などの基礎的な知識や技能を学び、「スチューデント・シティ」での6時間の体験学習に臨む。

 企業や役所など、ブースにある職業を選ぶためには「求職票」を書いて担任教師に提出する。一般社員とマネジャー職があり、前者は、責任は少ないが管理職に比べて給与は抑えられ、後者は責任も給与も大。「人気職は抽選になります。選考の基準は、志望動機と字の丁寧さ。まさに就職活動なんですよ」と言うのは引率の先生。人気の職業は「コンビニエンスストアやスポーツ店です。子ども達にとっては想像しやすい仕事なんでしょうね」。

昼食時に区長役の児童に聞いたところ「前半はイメージ通り。後半も安全に気を付けて無事に終了したい」とコメント
昼食時に区長役の児童に聞いたところ「前半はイメージ通り。後半も安全に気を付けて無事に終了したい」とコメント

 「品川区長」という職業もある。区長に就任した女子児童は最初の挨拶で「希望の職や役に就けなかった人もしっかりと自分の仕事をする。お互いを認め合う。仕事がうまくいかないときでも笑顔でコミュニケーションを取ることが今日の約束です」と語った。

区役所で住民登録、給与をもらったら納税

品川区役所ブースで住民登録や納税などをしている様子
品川区役所ブースで住民登録や納税などをしている様子

 約100人の子ども達はシフト制で行動し、「スチューデント・シティ」では常に1/3が市民生活をし、2/3が企業活動を行っている。

 具体的には1時間単位の「ピリオド」が3分割され、「仕事20分、仕事20分、ショッピング20分」というように、職場で働く役割と、消費者として「もの」「サービス」を買うプライベートな時間が交互に訪れる。

 1時間の「ピリオド」が終わると、勤め先ごとに「社内会議」が行われる。ここで仕事への取り組みや、売り上げなどを振り返り、次の「ピリオド」に向けた改善や売り上げアップについて戦略を練る。

 午前に2ピリオド、午後に1ピリオドが設けられ、仕事が終わると給与が振り込まれる。最後に全員参加のタウンミーティングで振り返りを行い、終了。

 学校に戻ってから、さらに1時間の事後学習が待っている。

 市民活動の一歩は「品川区役所」での住民登録だ。給与をもらったら住民税の納税、買い物の決済機能も付いた「IDカード発行の手続き」と発行手数料の支払いも必要になる。自動決済機能付きのIDカードがないと、この「街」では生活できない。ルールを守り、仕事と市民としての役割の両方をこなしていくのは、実生活そのものだ。

次ページから読める内容

  • 企業ボランティアが「当社の社員」として厳しく職業指導
  • 売買の対象になるのは「もの」だけではない
  • 8年生で学ぶのは、大人になったときの生活設計
  • 「公立学校に企業ブースはいかがなものか」という反対意見もあった

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