「一勝九敗の精神」で覚悟してやる!

羽生 そして今、5年が経ったわけですが、その間、トライ&エラーもあったんでしょうか。

堀江 今の形が定まるまで半年かけました。実は最初は単発の子育て支援で学生と家庭をつなげようとしたのですが、思い描いたような信頼関係がまったく生まれなかったんです。たまたまある家庭が継続的に学生を受け入れてくださった時に、とてもいい結果が出たのをきっかけに「頻度のマネジメントが必要」と気づき、モデルを見直しました。

羽生 諦めずにモデル変更するご判断が秀逸ですよね。「起業」に関心を持つ女性は増えているのですが、当初描いたモデルでうまくいかなかった場合に柔軟に対応する粘り強さまで持ち合わせるのって、結構難しかったりするようなんです。堀江さんの場合は、決して諦めない。なぜですか?

堀江 うーん、だって悔しいですよね。自分の人生をかけてまでやろうと決めたことですから。それに、私は失敗を「失敗」と思っていないと思います。すべてはよりよくするために必要なステップ。理想に到達するまでやり続けるのがミッションで、きっと死ぬまで達成できないと思っています。私、起業の時にユニクロの柳井会長がおっしゃっていた「一勝九敗の精神」で覚悟してやる!って決めていたんです。つまり、九戦九連敗しても「もう一度、勝負してください」と言える覚悟を持とうと。

羽生 そうやって粘り強くモデルチェンジをした結果、学生さんたちの反応はいかがですか?

堀江 4カ月のインターンの前後で明らかに意識が変わっていきますよ。「制度が充分に整っていなくても自分で工夫しながら仕事と育児を両立できると思いますか?」という質問に対して、「できると思う」と答える学生はインターン前は13%なのに、インターン後は60%まで増えるんです。やはりリアルな生活を見たり、実際にアドバイスを受けたりすることで、「これなら自分にもできそう」と前向きな気持ちが生まれるのだと思います。就職先の希望を変更したり、試験に何度も挑戦したりと、行動も前向きに変化していく学生の姿を見るのがとてもうれしいんです。

羽生 まさに意識を変えていらっしゃるんですね。ところで、予定外の起業だったということですが、資金はどうやってご準備を…?

堀江 起業する予定ではなかったので結婚資金として貯めていた200万円を投入しました。サービス業なので運転資金はさほど必要ないのですが、はじめのうちは薄給だったので実家に住まわせてもらったりと使えるインフラは使いました。でも、今は融資の制度も拡充していますし、その気になれば方法はいくらでも見つかるのではないでしょうか。