ケニアで価値観がゼロリセットされたことで帰国後、見事にふっきれた

阪部 現地で数々の衝撃的な経験は日本に戻ってから尾崎さんにどんな影響を及ぼしましたか?

尾崎 ケニアに行って、自分の価値観がゼロリセットされたことで帰国後、見事にふっきれましたね。技術移転の手助けに行ったわけですが、その結果、豊かになるとは一体どんなことなのかを突き詰めて考えることになった。

 何というか、自分の中でこれまで腑に落ちなかったことが非常に腑に落ちた。ケニアに行くまではいわゆる会社から押し付けられる「売り上げ」や「生産性」への評価にはどちらかといえば懐疑的でしたが、物質的な豊かさや所得の高さを求めるなら、やはり選択肢は2つしかないんです。

 一つは生産性を上げること。これまで1カ月かかっていた案件を、自分の技術のレベルを上げて15日で仕上げ、所得を倍にすること。もう一つは自分にしかできない特殊性を持ち、他者との差別化を図ること

 私の場合は、ただやみくもに生産性を上げるために効率化を優先し、「今日はここまででいい」と線引きをする仕事のやり方をよしとはできなかったので、とにかく自分が納得できるまでやりきることでレベルを上げていくしかない、と。そう割り切って考えることができるようになりました。

阪部 自分の意志で選んでいるという納得感において単に生産性の向上というのではなく、むしろ自己研さんにも近い考え方にように思われます。さらに、そう選択することでおのずからよりよいトレーニングの場やチャレンジの機会をつくることにもつながりますよね。

 次回はケニアで学んだことがその後の尾崎さんの生き方や働き方、そして子育てにどんな影響を与えたのかを詳しくお聞かせください。

* 次回に続きます。

(ライター/砂塚美穂、撮影/蔵 真墨)