グローバルで試されるのは、日本人としてのアイデンティティー

阪部 久野さんほどグローバルな経験をする人材は当時の日本では特殊であったとしても、我々の子ども達が迎えるグローバル社会では、新卒で入社した途端、一度も行ったことのない国に配属されるような事態は十分起こり得る話です。

 自分自身が国内から一度も出たことがないような親にも、グローバル時代を生きる、わが子をナビゲートするという役目があります。そんな親に「グローバル人材を語るなら、これだけは知っておいてほしい」というような外せないポイントはありますか?

久野 まず「自分は何のために海外(この国)に来ているのか」という自覚を明確に持つことが大事です。日本人であるというアイデンティティーを持っていないとビジネスの世界でグローバルな関係を築いていくことは難しいでしょう。

 最近はよく“グローバル人材”というテーマで議論されますが、この点については意外と語られていないような気がします。

 「あなた個人としてどう考えるのか」と意見を求められると同時に、「日本人代表としてはどう思うのか?」。外国人はそこを見ていますし、我々は試されています。

阪部 日本人としてのアイデンティティーを、親として、子どもに具体的にどう示せばいいのでしょう。当時27歳の新米パパだったころには分からなかったけれど、ご経験を積んだ今だから分かる、ご子息に伝えたいアドバイスなどがありましたら、ぜひ教えてください。

久野 一つは日本の歴史を学ぶこと。特に近代、幕末から明治維新以降をしっかり勉強しておいたほうがいいですね。日本はなぜこういう国になってきたか。単に日本史だけでなく世界との関係を知ること。

 例えば、今『花燃ゆ』が放映されていますので、あの時代を例に取ると、阿片戦争が勃発して列強の国が中国に攻め込んだ。その脅威の影響で、日本でも尊王攘夷の機運が高まり、幕府が衰退し、革命的な維新が起こった……という具合に。

 またアメリカに敗戦した後、なぜ日本は植民地化を免れたのか。こうしたことを自分の言葉で語るために歴史認識を持ってグローバルに打って出ていかないと、恐らくこれからの世界では通用しません。

 ビジネスリーダーとしての肩書があるとか、エグゼクティブレベルが高いなどよりもむしろ、こうしたリベラルアーツのレベルを常に問われるわけです。私も実際、そうでした。

 実はビジネスコーチングの世界においても、こうした教養の素地というのは極めて大事なことなのです。

左がKANAEアソシエイツ代表・阪部哲也さん
左がKANAEアソシエイツ代表・阪部哲也さん

* 次回に続きます。

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(ライター/砂塚美穂 撮影/蔵 真墨)