速報記事「『時短社員の正しい評価と戦力化』セミナー盛況!」の通り、7/15(水)、東京国際フォーラム(東京都千代田区)で「ヒューマンキャピタル2015」が開催されました。日経DUALでは「好業績企業に学ぶ 時短社員の正しい評価と戦力化」をテーマに特別セミナーを実施。主に企業の人事部門に所属する150人以上の方々にご参加いただきました。

日経DUAL編集長の羽生祥子がモデレーターを務め、ゲストとして、東レ経営研究所・シニアコンサルタントの塚越学さん、リクルートスタッフィング代表取締役社長の長嶋由紀子さん、サントリーホールディングス人事本部ダイバーシティ推進室・室長の弥富洋子さんをお招きしました。皆さんに語っていただいた「成功の秘訣」のダイジェストをご紹介します。「女性活躍推進 人事の明暗を分ける『データ収集力』」に続く下編では、主にサントリーホールディングスの弥富さんのお話と、全体の質疑応答についてリポートします。

多様化を目指し、ワークスタイルを革新

 次にマイクが渡ったのは、サントリーホールディングス人事本部ダイバーシティ推進室・室長の弥富洋子さん。過去の記事でも紹介された、時短社員の新しい評価方法や戦力化の制度についてご説明いただきました。

サントリーホールディングスのダイバーシティ推進室室長、弥富洋子さん
サントリーホールディングスのダイバーシティ推進室室長、弥富洋子さん

 サントリーホールディングスのダイバーシティー推進の発端となったのは2009年に実施された社員の意識調査。自社に対する満足度があまりにも高く、「同じようなタイプの人間ばかりになると、新たな発想が生まれにくいのではないか」と危惧する声が上がり、今のサントリーグループには「多様性」が必要だと考えられたといいます。

 社内の多様化を進めるために、同社では「ワークスタイルの革新」を宣言。「制度拡充」「ITツール」「意識改革」「研修」の4つを柱に取り組みを開始しました。

 この目的は「場所」と「時間」を活用して生産性を最大限に上げること。フレックスタイムを変更するほか、10分単位で取得できるテレワーク(在宅勤務)やキッズサポート休暇などを導入。当初は全マネジャーに対して権限を付与し、決められた期間内に1日はテレワークを行うことを義務付けるなどして運用を開始し、「意外にいい」と好感触を得たことから定着していったそうです。

 「『やるときはやる』『一気に進める』というのが大切。2010年は、3カ月ごとに新しい取り組みに着手しました。
 テレワークは、今では『やって当たり前』という認識。全社員の半数がテレワークを活用しています。企画書作成など、ざわついているオフィスよりも自宅でのほうが集中できる、という声は多いですね。もちろん、ママ社員はテレワークを使えば時短勤務をする必要もありません」(弥富さん)

システムによってマネジメント業務を支える

 世間一般ではテレワークを導入すると社員の勤怠管理が難しくなると考えられています。うまくいっている会社ではどのように運用しているのか、弥富さんはその疑問にも答えてくださいました。

 「マネジャーとメンバーが週ごとにスケジュールを共有し、テレワークを行う際はスタート時と終了時に上司にメールで報告します。PCは自前のものを使用しますが、ログオン・ログオフの時間は自動的に記録。15分間使用しなければログオフされます。こうしたシステムによりマネジメントをサポートしています。社員自身も『この作業にはこれくらいの時間を要する』といったことを意識できるので、タイムマネジメント力も高まっていると感じます」(弥富さん)

 「育児中の社員にとっては、テレワークと『キッズサポート休暇』を組み合わせることで時間の効率化が図れます。例えば、『午前中は自宅でテレワークを行い、午後はキッズサポート休暇を取得して保育園のイベントに参加』といった1日の過ごし方も可能となるわけです」(弥富さん)

 このほか、時短勤務社員の昇格要件考課についても触れられました。同社では個人業績への考課とは別に、対象となる時短勤務者が「フルタイム出勤した場合には、どれくらいのアウトプットを出せるか」を計算して考課を行うという方式を取っています。昇格の適正を正しく判断する狙いがあるといいます。

塚越さんのコメント

 フレックスタイム制度やテレワーク制度を導入する企業も多数ありますが、重要なのは「運用」です。便利な制度でも、どんな場面でどう使えばいいか社員は分かっていなかったりする。それを企業側が示す必要があります。

 サントリーさんの場合は、テレワーク時に「どこから取りかかるか」を考えるなど、時短術をどう使うかというソフトスキルをうまく活用できていると思います。