仕事や育児で精いっぱいになるのは分かる。でも、“女性性”は捨てないで

―― 治療現場で、患者さんの口からそういった話が出てくるのですか?

黒田 一般論ではありますが、男性はどんなにインテリジェンスが高い方でも、女性のなまめかしい部分に強く興奮を覚える傾向の方がいらっしゃいます。第二子不妊のセックスレス状態の理由が、単に仕事による忙しさであればいいのですが、実態としてはそれだけではないことが多いんです。

―― どんな解決策が考えられるのでしょうか。

黒田 私も働く母親ですから、その難しさも実感として分かりますが、やはり「女性性を捨てない」ように努力することが大事だと思います。シンプルですが、美容院に行って、キレイでいる、と。仕事や育児で精いっぱいであっても、女性性を捨ててはいけません。

 ただし、女性にばかり問題があるわけでもありません。女性はセックスする相手に対して「精神的に尊敬できるか、心から愛せるか」という点を重視する傾向があります。相手の男性に対する尊敬の念や愛情が無くなったら、「やめてよ」となりがちです。男性の側にも、女性に尊敬され、愛されるよう、自分を高めていく努力が必要でしょう。

 いい第二子妊娠に持っていくためには、夫婦同士が尊敬し、愛情を持ってセックスするということが大前提にあると思うんです。愛情の無い、心の無いセックスでは妊娠しませんから。

 男性も仕事や子育てに追われ、精神的・肉体的なストレスや過労に悩む奥様を見ています。そして、何となく「妻に構ってもらえていない」という心の寂しさと、奥様を女性として見られなくなってきている状況で、無理に「第二子のために」と思っても、そうそう妊娠には至りません。

 二人目を授かるご夫婦の多くは、第一子の授乳が終わってすぐ次のお子さんができる場合が多いのです。ご夫婦ともにお若く、性欲も強く、仕事も育児も忙しいけれど、何となくやっとセックスができるようになって、すぐ妊娠するというケースです。そのタイミングを逸すると不妊になる確率が高まります。

 第二子以降の不妊では、「機能性不妊」といって医学的な原因の見つからない場合が多いのです。この機能性不妊の枠に入ってしまうと結構大変で、結果的に妊娠に至ることもありますが、その場合もなぜ妊娠したかという理由が分からないのです。

 奥様の女性としての魅力を盛り立てるためにも、男性の皆さんには育児や家事を手伝う。それをご自身ができないのであれば、ヘルパーさんを頼むなどして、奥様の時間的・精神的余裕を確保する。遠回りに聞こえるかもしれませんが、それが第二子不妊の解消につながるように思っています。

(取材・文/日経DUAL編集部 小田舞子、撮影/鈴木愛子)