夫婦で働きながら子育てをしているDUAL世帯において、父親が果たすべき役割について考える新連載「パパ力アカデミー」。第1回は、子どもを取り巻く環境の変化、そしてその結果、変わってきた親に求められる能力について、千葉大学教育学部教授・副学部長の藤川大祐さんにお話を聞きました。藤川さんによれば、今、子どもを取り巻く環境は「誰も体験したことがないような状況に突入している」そうです。そこで父親に求められる役割とは?

藤川大祐 千葉大学教育学部教授・副学部長。メディアリテラシー、ディベート、環境、数学、アーティストとの連携授業、企業との連携授業等、様々な分野の新しい授業づくりに取り組む。著書に『スマホ・パソコン・SNS よく知ってネットを使おう! こどもあんぜん図鑑』(講談社・監修)、『12歳からのスマホのマナー入門』(大空出版)、『本当に怖い「ケータイ依存」から我が子を救う「親と子のルール」』(主婦の友社)など

ネット利用時間が増え、子どもは忙しさを感じている

―― 「情報化社会」という言葉自体はかなり前から使われていますが、ここ2、3年でスマホやタブレットが急速に普及し、その様相も変わりつつあると思います。具体的にはどのような変化が起きていますか?

 スマホやタブレットの普及によって、子ども達の身の回りに何らかの情報端末がある状況が当たり前になってきました。自分用ではなくても、親のスマホを使って遊んでいるという子どもは多いと思います。

 私は「平成25年問題」と呼んでいますが、この年にスマホが一気に普及しました。それに伴い、ネットいじめやネット犯罪の被害が急に増えましたね。情報化自体はなだらかに進行していることですが、子どもが巻き込まれる事件として顕在化してきたのがこの年なんです。

 事件の増加だけでなく、問題となっているのが子どもの時間感覚の変化です。

 子どもは情報端末を2つの娯楽に使います。ひとつは、ゲームなどの個人的なもの。もうひとつは友達とのメールなどソーシャルな娯楽です。ゲームは昔からありましたが、スマホ用のゲームは無料のものがほぼ無限にあります。以前であればお金を出して買わなければ遊べなかったのが、今では無料で無尽蔵に楽しめる。遊び尽くすということがなくなってしまったんです。友達とのメールも、どちらかがやめない限り延々と続いてしまいますね。

 私達が子どもの頃は時間が余っているのが普通でした。それがスマホの普及により、「子どもが退屈しない時代」という誰も体験したことがないような状況に突入しているんです。

 ベネッセによる「子どもの放課後の生活時間調査」のデータを見ると、この「子どもの多忙化」がはっきりと読み取れます。数年前に子どもの学力低下が問題になり、学習に力を入れる対策を行ったため勉強時間は微増、早寝早起きもしっかり定着していて睡眠時間も微増。しかしネットの使用時間は激増しています。つまり、今の子どもはもともとぼーっとしていた時間をネット利用に使っているんです。ぼーっとする時間がないことで、忙しさを感じる子どもが増えていますね。

子ども達に対する調査では、小学生・中学生・高校生すべてにおいて半数以上が忙しさを感じている。また、もっとゆっくり過ごしたいと回答した割合は小学生で7割、中・高校生で8割以上にのぼった(ベネッセ総合研究所「第2回 放課後の生活時間調査」より)
子ども達に対する調査では、小学生・中学生・高校生すべてにおいて半数以上が忙しさを感じている。また、もっとゆっくり過ごしたいと回答した割合は小学生で7割、中・高校生で8割以上にのぼった(ベネッセ総合研究所「第2回 放課後の生活時間調査」より)

メディアの使用時間の調査ではすべての対象においてテレビやDVDの鑑賞時間が減少し、携帯電話やスマートフォンの使用時間が特に中高生において大きく増加した。また、この他雑誌や小説などの活字媒体を読む時間、人と会う時間も減少している(ベネッセ総合研究所「第2回 放課後の生活時間調査」より)
メディアの使用時間の調査ではすべての対象においてテレビやDVDの鑑賞時間が減少し、携帯電話やスマートフォンの使用時間が特に中高生において大きく増加した。また、この他雑誌や小説などの活字媒体を読む時間、人と会う時間も減少している(ベネッセ総合研究所「第2回 放課後の生活時間調査」より)