独自性のないネット体験では子どもは成長しない

―― 子どもが忙しさを感じることにはどんな問題点がありますか?

 ネットを使った多忙化の問題は、その忙しさに見合うメリットがないことです。

 それが子どもの成長に繋がるのであればともかく、ネットは基本的に誰でもできるゲームをして、誰でもできるコミュニケーションをするだけ。独自性のない時間の浪費になってしまうんです。

 ネットもうまく使えば独自の体験ができますが、それができる子どもは残念ながら例外的。現在、大半の子どもにとってネット利用は「コモディティ」、つまり既に普及してしまった誰でもできる体験にしかなりません。その中でネットばかりをやっていても、その経験は誰からも評価されないということになってしまいます。

―― そうならないために、親がすべきことはありますか?

 そこで重要になってくるのがネットではない「体験」なんです。「どうやって子ども時代ならではの体験をさせてあげるか?」を考えることが、これからの親の役割ではないでしょうか。そこには各家庭の環境の差、教育力の差が如実に表れてきます。

 現在、忙しい家庭では「メディアに子守りをさせる」という状況に陥っています。つまり、誰でもできる電子的な体験しかさせてあげられないという状況です。こうして育った子どもは勉強はそこそこできたとしても、暇な時はずっとスマホで遊び続けた結果、将来社会で活躍するスキルを身につけられず、やりたいことも見つけられないということになりかねません。

 裏を返せば、親が教育に時間をかけることができれば子どもはネットから離れられるということでもあります。たとえばこれからの時期であれば、父親とキャンプやスポーツをするのもいいかもしれません。そうした楽しみがあれば、子どもはネットをする必要がなくなるんです。

 これは週末のおでかけや平日の習い事にも言えることです。特に習い事は子どものうちにやっておけば将来の財産になることも多い。ちょっとイラストが描けるとか物語が考えられるとか、ネットの発達によってそういう人が繋がりやすくなっていますし。何かできるということは子どもの世界を大きく広げると思います。それに今はマイナーな趣味でも、ネットの発達で仲間を見つけやすくなっていますよね。むしろ人ができないことをできるほうが、これから求められる機会に恵まれると思います。