自由研究は子どもの小さな疑問を追求できるチャンス!
──夏休みの宿題といえば自由研究。でも、科学に生物、歴史に工作と幅が広すぎて一体何をすればいいのかわからないという子も多いと思います。そもそも自由研究って何を学ぶものなのでしょう?
まず、学校教育というのは、子ども達に必要と考えられる内容に基づいた学習指導要領にそって行われています。
しかし、それだけでは子ども達の素朴な疑問に答えきれない面があります。学校という枠組みの中だと、どうしても時間や場所の制約があり、公平性も大切ですから、仕方のないことだと言えます。
それを補えるのが自由研究。自分が興味を持ったことなら何でもかまわないので、まじめに、一生懸命に取り組む。そのためには、あまり制約を設けないのが一番良いだろうと。それがたとえ宿題として出され、嫌々やったものであっても、子ども達は苦労や努力をするでしょう。それが、結果的に子ども達の考える力に繋がると思います。
──なるほど。だからこそ、「自由」なんですね。
そうなんです。「自由」なんだから、もっと自由にとらえてもらえればいいんじゃないかな。それに、学校だと理解力やスピードに個人差があって、生徒一人一人に合わせた対応は難しいのです。でも家庭なら、子どもが戸惑っていたり、今日中に答えが出そうになければ「明日にすれば?」と、その子自身に合わせてあげることができる。さらに、1カ月という長期の休日を利用した学習なので、たっぷりと時間を使って実行することができるんです。
ジャンル分けはしない。子どもが「やりやすい」テーマを選ぶ
──いくら自由といっても、科学や歴史や工作とジャンルがたくさんありすぎて、迷う子ども達も多いと思います。取りかかりやすいジャンルってあったりしますか?
まず「ジャンル」という考え方をやめた方がいいですね。そういう分け方をすると発想をしばってしまいがちになってしまうんです。
たとえば、6500万年前に地球に隕石が落ちて恐竜が絶滅しました。隕石の衝突は「天文学」や「地学」ですが、隕石が落ちてきた仕組みは万有引力と関係があるので「物理学」、恐竜の生態は「生物学」と、すべて結びついているんです。それは「理科」だけではなく、地球の「歴史」でもありますし、生物の栄枯盛衰に「文学」的なテーマを求めることもできます。そうやって考えていくと、どんな事柄もジャンルや科目などの垣根を越えて関連し合っているのです。
では、なぜ学問はジャンル分けされているのか。それは、その方が考えやすいからです。全部の領域を網羅するのは大変なので、一定の枠を作ることで、より詳しく突っ込んだ研究をすることができる。
ただそれは、子ども達が自分の知りたいことを考える時には必要のないことです。社会だと思って調べていたら理科だったってことあるじゃないですか。逆もまたしかり。それでいいじゃないですか。そもそも「ジャンル」という考え方自体が自由研究の考え方と相反することなのです。とにかく自分の好きなことにフォーカスすることが一番だと思うんですね。そして、「自分がやりやすいと思うもの」に挑戦してください。
──やりやすいものというのは、自分が興味があるものですか。
興味の対象があればいいのですが、それが見つからないときは「やりやすさ」を優先します。たとえば、毎日電車に乗ると富士山が見えるのなら、毎日富士山をスケッチすればいい。そういう、自分の生活と密着しているものがやりやすいものです。
たいして興味がなくても毎日観察を繰り返すことで、子ども達はいろんな工夫をしていきます。そうすると新たな発見があるので、結果的にいろんなものへと結びついていく。そう考えるとジャンルは関係ないので、まずはやりやすい物をどんどんやっていくことをおすすめしたいと思います。