そろそろ夏休みも終盤。あと2週間も経たないうちに新学期を迎えます。夏は海にバーベキューにキャンプと子どもと思い出を残す絶好のチャンス! 残りの夏休みも思いっきり遊びたいですよね。
 しかし、そうはいっても気になるのは夏休みの宿題。まだまだ完成していない方も多いのではないでしょうか。特に親の頭を悩ませるのが自由研究。先延ばしにしていてテーマすら決まっていない! 今からじゃ何をしていいかわからない! なんてことありませんか?
 そんなDUAL読者のために、夏休みの自由研究に役立つ実験や博物館、イベントなどを4日間にわたってご紹介します。題して「駆け込みOK!夏休み自由研究特集」。
 第1回は「自由研究の意義」について、自由研究に関する著書も多数出されている、山村紳一郎さんにうかがってきました。そもそも自由研究って何のためにするのでしょうか?

【駆け込みOK!夏休み自由研究特集】
第1回 夏休みの自由研究、極意は親子で一緒に楽しむこと
第2回 自由研究はスタンスが重要!始める前に視点を決める
第3回 自由研究に最適な全国の博物館/理系編
第4回 自由研究に最適な全国の博物館/文系編

山村紳一郎(やまむらしんいちろう)
1979年、東海大学海洋学部卒業。科学や技術の分野で取材・執筆活動を展開。月刊『子供の科学』(誠文堂新光社)などの雑誌や書籍を中心に、科学実験の開発・実演記事を執筆。2004年度からは和光大学の非常勤講師として、科学の楽しみ方を伝える。また、教育番組の製作協力、各種ドラマ番組の科学監修なども多く行う。

自由研究は子どもの小さな疑問を追求できるチャンス!

──夏休みの宿題といえば自由研究。でも、科学に生物、歴史に工作と幅が広すぎて一体何をすればいいのかわからないという子も多いと思います。そもそも自由研究って何を学ぶものなのでしょう?

 まず、学校教育というのは、子ども達に必要と考えられる内容に基づいた学習指導要領にそって行われています。

 しかし、それだけでは子ども達の素朴な疑問に答えきれない面があります。学校という枠組みの中だと、どうしても時間や場所の制約があり、公平性も大切ですから、仕方のないことだと言えます。

 それを補えるのが自由研究。自分が興味を持ったことなら何でもかまわないので、まじめに、一生懸命に取り組む。そのためには、あまり制約を設けないのが一番良いだろうと。それがたとえ宿題として出され、嫌々やったものであっても、子ども達は苦労や努力をするでしょう。それが、結果的に子ども達の考える力に繋がると思います。

──なるほど。だからこそ、「自由」なんですね。

 そうなんです。「自由」なんだから、もっと自由にとらえてもらえればいいんじゃないかな。それに、学校だと理解力やスピードに個人差があって、生徒一人一人に合わせた対応は難しいのです。でも家庭なら、子どもが戸惑っていたり、今日中に答えが出そうになければ「明日にすれば?」と、その子自身に合わせてあげることができる。さらに、1カ月という長期の休日を利用した学習なので、たっぷりと時間を使って実行することができるんです。

ジャンル分けはしない。子どもが「やりやすい」テーマを選ぶ

──いくら自由といっても、科学や歴史や工作とジャンルがたくさんありすぎて、迷う子ども達も多いと思います。取りかかりやすいジャンルってあったりしますか?

 まず「ジャンル」という考え方をやめた方がいいですね。そういう分け方をすると発想をしばってしまいがちになってしまうんです。

 たとえば、6500万年前に地球に隕石が落ちて恐竜が絶滅しました。隕石の衝突は「天文学」や「地学」ですが、隕石が落ちてきた仕組みは万有引力と関係があるので「物理学」、恐竜の生態は「生物学」と、すべて結びついているんです。それは「理科」だけではなく、地球の「歴史」でもありますし、生物の栄枯盛衰に「文学」的なテーマを求めることもできます。そうやって考えていくと、どんな事柄もジャンルや科目などの垣根を越えて関連し合っているのです。

 では、なぜ学問はジャンル分けされているのか。それは、その方が考えやすいからです。全部の領域を網羅するのは大変なので、一定の枠を作ることで、より詳しく突っ込んだ研究をすることができる。

 ただそれは、子ども達が自分の知りたいことを考える時には必要のないことです。社会だと思って調べていたら理科だったってことあるじゃないですか。逆もまたしかり。それでいいじゃないですか。そもそも「ジャンル」という考え方自体が自由研究の考え方と相反することなのです。とにかく自分の好きなことにフォーカスすることが一番だと思うんですね。そして、「自分がやりやすいと思うもの」に挑戦してください。

──やりやすいものというのは、自分が興味があるものですか。

 興味の対象があればいいのですが、それが見つからないときは「やりやすさ」を優先します。たとえば、毎日電車に乗ると富士山が見えるのなら、毎日富士山をスケッチすればいい。そういう、自分の生活と密着しているものがやりやすいものです。

 たいして興味がなくても毎日観察を繰り返すことで、子ども達はいろんな工夫をしていきます。そうすると新たな発見があるので、結果的にいろんなものへと結びついていく。そう考えるとジャンルは関係ないので、まずはやりやすい物をどんどんやっていくことをおすすめしたいと思います。