2015年4月に施行された「子ども・子育て支援新制度」は、果たして待機児童問題を解消し、少子化を止めることができるのでしょうか。
保育園を取り巻く問題が山積する今、若き社会学者・古市憲寿さんが著書『保育園義務教育化』(小学館)で「保育園の義務教育化」を提唱し、一石を投じました。内閣府「少子化大綱」の有識者委員であり、少子化や男女共同参画などをテーマに活躍する少子化ジャーナリスト・白河桃子さんが古市さんの真意に迫り、日本の未来を語り合った対談。大反響のあった前編「『保育園義務教育化』は少子化を止められるか」に続く後編をお届けします。
子育てしやすい社会に変えるためには、ムードを作ること
DUAL編集部 「今まで結婚にも子育てにも興味がなかった」という古市さんが、『保育園義務教育化』という本を執筆するまでになったということは、現時点で無関心な人たちも、今後変化していく可能性があるのかもしれないと希望を持って前回のお話「『保育園義務教育化』は少子化を止められるか」をうかがいました。
古市さん(以下、敬称略) 僕もそうでしたが、現時点で興味がない人は、子育てをめぐるいろいろなことを単純に知らないだけという人が多いと思うんです。子育てを取り巻く実状を知らないから、異様だと思うこともない。政治家や、いわゆるおじさんたちも、待機児童問題について本当の意味でわかっている人は多分ほとんどいないと思います。だからこそ、僕はそこを伝えたい。実状を知ればほとんどの人が「異様だ」と思うはずです。
白河さん(以下、白河) なんとなく言葉の意味は分かっても、実状は知らないことが多いですよね。身近に子育て世代がいないとわからないし、いても、旧来の子育て像から抜け出せない。働いているお母さんに「そろそろ辞めなさい」と実の母親が言ったりする。
古市 三世代同居も減って、都会でも地方でも子育てが大変になっています。これだけ子育て環境が変わっていることを知らせてあげるだけでも、ずいぶん見方が変わると思います。政治家のみなさんは、空気を読むことに長けていらっしゃいますから。
白河 そのとおりですね。だから空気が変わると急激に変わる。変革がおこりますよね。
古市 政治家のみなさんだって、別に信念に基づいて「少子化対策したくない」とか、「保育園を増やしたくない」と思っているわけじゃない。そういう人は本当に一部でしょう。ほとんどの人は、ただお母さんたちがどんなに大変な状況に置かれているかを知らない。社会の大部分が変われば、その方向に向くはずなんです。
——— ある意味、私たちが現場からも声を上げ続けて空気を変えていかないと、変わらないということですね。
ひとりひとりが声を上げていけば政治や社会も変わっていく
白河 もちろんこれまでも、当事者も研究者も声を上げてきたわけですけれど、そこに、古市さんのような「黒船」が来たことで大きな追い風になると思いますよ。