白河 ヨーロッパを見ていると当たり前にある人権感覚が、日本では非常に薄いですね。子どもの人権も、女性の人権も余り認められていない。労働者の人権も認められていないので、男性も含めてみんながつらい。

なぜ、女性(ママ)同士を対立させてしまうのか

古市 それから、所沢市の待機児童の問題もそうですが、置かれた状況が違うからといって女性同士で対立する必要はないはずなんです。保育園が十分にないとか、女性がちゃんと定時で働ける環境があまりないとか、そういうことは根本的には制度の問題です。政府でなんとかできる問題を、制度で解決せずに女性同士を対立させてしまうのがすごく悲しいなと思ったんですよね。

白河 ある偉いおじさまに、「それは分断統治といって最も統治しやすい方法なんだよ」と言われたことがあります。当事者がまとまってやって来ると強くなるので、働いているお母さんとそうじゃないお母さんとか、お母さんとお母さんじゃない人が対立しているうちは、統治しやすいということです。ですから、女性も、男性も、一丸となる必要がありますよね。

少子化問題は全ての人に関わる重要な問題

白河 専業主婦は、本当に働く必要のない人と、働くための環境がなくて本当に困っている人とに二極化しています。でも、どちらにしても、おそらく9割くらいの人は、一生懸命稼ぐ力も上げていかないと、老後貧困になってしまう人が増えていくのではないでしょうか。

古市 大きなリスクですよね。今、離婚率は3割ですから。「結婚は永久就職」なんてとんでもない。社会学者の瀬地山角さんがよく言っているのですが、倒産率3割の会社に入って喜ぶ人は誰もいませんよね。だったら自分で稼げる道を伸ばしておいたほうが、明らかに合理的です。

白河 夫婦の単位でも女性が働くことはリスクヘッジになりますし、国を挙げて女性に働いてもらわないと、日本はもたないということも、企業サイドでもかなりトップの人はよく認識していると思います。ただ、まだまだ見せかけの女性活用も多い。

ピケティが本気で危惧する日本の少子化問題

古市 経済学者のトマ・ピケティ氏と今年1月に対談したとき、彼が一生懸命語ってくれたのは日本の人口減少と少子化でした。「少子高齢化が進んでいるのに、女性が働きにくい環境を放置している意味が本当にわからない。このままでは、日本は本当に恐ろしいことになる」ということを、何回も言われました。

 経済成長は人口を増やすか、生産性を上げるしか方法がないのに、日本は人口を増やすことに本当に無頓着。ピケティ氏はフランスの学者なので、日本はとても不合理だと思われているようです。

白河 フランスは、出生率回復に取り組んで成功していますからね。日本では、少子化は女、子どもの問題だと思われてきたふしがありますが、本来は、社会全体の問題であり、経済の問題ですよね。

古市 僕もスタートは日本全体をなんとかしたくて少子化をどうこうしようと思ったわけではありません。身近な妹や友人を見ていて関心を持ったわけです。僕がそうだったように、きっかけさえあれば、実は誰もが、「少子化問題は自分にとって身近な大きな問題だ」と気がつくことができると思いますよ。

(ライター/太田美由紀 写真/小野さやか)

【参考書籍/白河さんと古市さんの著書】

『保育園義務教育化』(古市憲寿著/小学館)
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『専業主婦になりたい女たち』(白河桃子著/ポプラ社)
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