食糧の生産量を劇的に増やした「緑の革命」とは
「この50年でお米や麦やお肉を作る技術はものすごく進歩した。だからこの先食糧不足になる心配はほとんどないんだ」
「へ~、ものすごく? でもまだ飢え死にする人がいるんでしょ。テレビで見た」
「そういうことをなくすために必要なことは何だと思う?」
「食べ物を大事にする。ご飯を残したり、捨てたりしない」
「その通り。そしてもっと大事なのは、みんなが仲良くすることだ。考えてごらん。仲良しの友だちがお腹を減らしてたらどうする?」
「そっか。絶対食べ物を分けてあげるもんね」
人類は長らく食糧の安定的な確保のために奮闘してきました。川島さんによると、この難題をほぼ解決できた最大の要因は「緑の革命」と呼ばれる一連のブレークスルーでした。具体的には品種改良、化学肥料と農薬の普及、そして灌漑面積の拡大。中でも一番の主役は化学肥料、すなわち窒素肥料だといいます。
「空気から窒素肥料を合成する方法が、1910年代のドイツで発明され、戦後それが世界に広まりました。この窒素肥料を農地に投入することで単位面積当たりの生産量が劇的に増えたのです。典型的なのはフランスの小麦。19世紀から20世紀の半ばまで1ヘクタール当たりの収穫量はずっと1トン台でしたが、窒素肥料を投入した1950年以降これが急増し、2000年代には7トンを超えました。それ以前のフランスは小麦の輸入国でしたが、今では世界を代表する輸出国になっています」(川島さん。以下同様)