同時期の「畜産革命」で食肉生産も効率アップ

 「緑の革命」とほぼ同時期に、畜産分野でも革命的な進歩がありました。結果として食肉の生産効率がグンと高まったことも、食糧危機への不安を大いに後退させたファクターです。例えば肥育期間の短縮。家畜に費やす飼料の量は育てる期間(食肉として出荷するまでの期間)の長さに左右されますが、これを劇的に短縮することに成功したのです。豚ならほぼ生後4カ月、鶏に至っては4週間、といった具合。最も成長する期間だけ集中的に肥育することで、同じ量の肉をより少ない飼料で生産できるようになりました。

 「皮肉なことに、人は劇的な進歩ほど警戒します。特に窒素肥料はそれまでの生産技術からすると魔法のような効果を発揮したので、体に害があるのではないかといった懸念が広がりました。それは今も根強く残っていますが、人体への悪影響は半世紀以上経った今も何一つ確認されていません」

人口が増えても生産量を増やす余地はいくらでもある

 食糧危機論者は「世界の食糧生産は既に限界に達していて、これ以上増やせない」と主張します。しかしそれは誤りです。なぜなら「緑の革命」はまだ世界中に波及していません。窒素肥料にしてもまだ十分に使っていない国、地域が世界にはたくさんあります。例えば東南アジア、南米、南アフリカなどでも先進国並みに窒素肥料を使えば、まだまだ生産量を増やす余地があるのです。

 「農地が不足しているという指摘も間違っています。例えばブラジルといえば、アマゾンの熱帯雨林の破壊が問題になりますが、それをせずとも農地化できる半乾燥の台地『セラード』が2億ヘクタールもあります。アフリカも同様に土地が余っています。世界の農作物作付面積は1960年代以降、着実に拡大しているのです」

 先進国に限っては作付面積が減っていますが、それは『緑の革命』で生産量が増え過ぎたため。過剰生産による値崩れを防ぐための休耕地ですから、価格が上がるなどすれば生産を再開できます。休耕地の分だけ生産余力があるとも言えるでしょう。