子育てと仕事の両立にコツなんてないんじゃないですか

―― 荒岩は仕事と家庭を両立するためにさまざまな工夫を凝らしています。それをうえやま先生はどのように考えていったのでしょう?

うえやま どうしたらいいのか、考えました。仕事は5時に終わってすぐに帰らなせないと、まことは寂しいよな、でも仕事はそういうものでもないよな、と。遅くに帰ってきた奥さんと「タッチ!」なんてやってから、また夜中に会社に行くわけです。守衛さんに「また、あんた来たね」なんて言われながらね。なにせバイクで5分の距離に住んでますから(笑)。

―― 職住接近は大切な要素なんですね。

うえやま 実はそれも担当さんのアイデアでね。最初は「バイクで10分」にしておいたら、「5分にしちゃいましょう!」と言われたんですよ。パッと帰って、パッと用事を済ませることができる距離にしました。(息子の)まことがまたいいヤツなんですよ……(笑)。

―― 荒岩と虹子のように、夫婦で協力し合いながら仕事と子育てを両立していくためのコツとは何なんでしょうか?

うえやま コツね……。コツはないと思うな。「仕事と私と、どっちが大事なのよ?」なんて、よく女の人が言うじゃないですか。でも、どっちも大事だと言うしかないんですよね。

―― じゃ、「どっちが大事?」なんて言わないことがコツなんでしょうか。

うえやま そうそう。それは言わないほうがいいですね。男からも女からもそうです。でも、子どもが熱を出したりケガをしたら、すっ飛んで帰るしかないわけです。仕事は大変だろうけど、子どもが熱を出したら、どっちが大事かもクソもない

―― 荒岩と虹子は、何かトラブルに直面しても、トラブルを解決するために一生懸命になるだけで、お互いを責め合わないですね。

うえやま そうですね。トラブルが起こったら2人で協力して解決するしかない。たいした事件は起きないけど、ささいなことが事件になるんですね。まことの顔色が悪い、とか(笑)。

―― 家族にとっては大事件ですからね。

うえやま 戦争とかは起こらないけど、漫画のつくり方としては同じなんです。盛り上げて、解決して、「よかった!」と読者にも思わせることができれば、大きな事件を起こす必要はないんですよ。

―― 我が家でも子どもが熱を出して、保育園から「迎えに来てくれ」なんて電話がかかってきたら、本当に大事件ですから。妻も会社に行っていますし、僕だってこうやってうえやま先生にインタビューしていますし(笑)。トラブルは夫婦が協力して解決していくしかないんですね。

うえやま そうですね。子どもに寂しい思いはさせたくないですからね。それが基本だと思います