ワーキングマザーの日常には、誰かと交渉することがいっぱいあります。妊娠したとき、育休から復帰するときは働き方について上司と「交渉」。家庭では夫に家事・育児分担を「交渉」。子どもが熱を出せば両親や義理の両親に「子どもを預かって…」と「交渉」。上手に頼めなくてストレスを溜めてしまったり、相手に誤解されたり…。「もっと上手に相談したり、物事を頼んだりできるようになりたいな」と思う人も多いのではないでしょうか。

 日経DUALでは、3人のお子さんを育てながら交渉トレーナーとして活躍する小早川優子さんによる連載「ハッピー交渉(ネゴシエーション)トレーニング」をスタートします。「交渉学」は、1980年代にハーバード・ロースクールの授業の一科目として始まり、今では世界のロースクールやビジネススクールで教えられている人気の授業です。「交渉学」のエッセンスを用いて日常のコミュニケーションをウィンウィン(Win-Win)にする、それがハッピーネゴシエーションです。ハッピーネゴシエーションを使うと、周りのみんなとウィンウィンで幸せな関係になれます。

「互いに勝つ交渉」と「一方が勝つ交渉」

 突然ですが、質問です。「交渉」と聞くと、どんな印象を受けますか?

 言い合い、議論、話し合い、妥協、駆け引き、勝ち負け、などいろんな言葉が頭に浮かぶと思います。けれども、一言ではうまく言い表すことができないのではないでしょうか。それもそのはずです。なぜなら「交渉」という言葉には相反する二つの意味が混在するからです。一つは「味方との協議(きょうぎ)」であり、もう一つは「敵との競議 (きょうぎ)」。つまり交渉には2種類の意味があるのです。(※競議は造語です)

 一つめは、信頼関係型、協力的などと定義されることもありますが、ここでは「ウィンウィン(W-W)交渉」と呼びましょう。もう一つは競争型、支配的などと定義されるもの。ここではW−Wの対極として、勝ち負け、のウィンルーズ(W−L)交渉と呼びますね。先ほどもいいました通り、W−W交渉とW−L交渉は180度違う意味を持ちます。両者の特徴はこんな感じです。

 では、ここで再び質問です。日常のどんな小さなコミュニケーションも、例えば食事中にパートナーに「そこのお塩取ってくれる?」という他愛のない会話も、交渉の一つと言えるわけですが、みなさんは日常生活でどちらの方法で交渉していますか?