6月29日、内閣府中央合同庁舎にて開催された「さんきゅうパパプロジェクト キックオフシンポジウム」。主催者の有村治子内閣府特命担当大臣(少子化対策)らの挨拶に続き、配偶者の出産直後に取る男性の「産休」取得について有識者たちのパネルディスカッションが行われた。男性の産休取得を促進する狙いとは? 今回は、男性が産休を取得することの意味と効果についての有意義なディスカッションをレポートする。

父親の産休取得率、目標は2020年に80%!

 男性の「育休」取得率は2.30%(平成26年度速報)。女性の86.6%に比べるとその差は歴然。2015年3月20日に閣議決定された少子化社会対策大綱では、配偶者の出産後2カ月以内に男性が半日または1日以上の休みを取る「産休」の取得を推進している。男性の「産休」については過去の統計がなく取得率は不明だが、5年後に80%という目標を設定した。かなり強気の数値目標といえる。

スローガンは「パパが産休。家族にサンキュウ」

 「さんきゅうパパプロジェクト」のキックオフに際し、有村治子内閣府特命担当大臣(少子化対策)は、「スローガンには『命が誕生した瞬間をパパも休暇を取って共に過ごし、産んでくれたママにありがとう、そして生まれてきた赤ちゃんにありがとうと言おう』という思いが込められている。父親の家事育児時間が長いほど、第二子以降を授かる率が高まるというデータがある。父親も産休を取り、父親になったことを実感し、家事育児のマネジメントに繋げて欲しい」とメッセージ。

中央:有村治子内閣府特命担当大臣(少子化対策)、左から二番目:日本経団連副会長の岡本圀衞さん(日本経団連・人口問題委員長/日本生命保険会長)、右から二番目:福島県知事の内堀雅雄さん(全国知事会次世代育成支援対策PTメンバー)、ほか内閣府で子どもの出産で休暇を取得した経験のあるパパ達
中央:有村治子内閣府特命担当大臣(少子化対策)、左から二番目:日本経団連副会長の岡本圀衞さん(日本経団連・人口問題委員長/日本生命保険会長)、右から二番目:福島県知事の内堀雅雄さん(全国知事会次世代育成支援対策PTメンバー)、ほか内閣府で子どもの出産で休暇を取得した経験のあるパパ達

 その後、日本経団連副会長の岡本圀衞さん(日本経団連・人口問題委員長/日本生命保険会長)、福島県知事の内堀雅雄さん(全国知事会次世代育成支援対策PTメンバー)の挨拶、企業や自治体による父親の産休・育休取得の事例発表が行われた。

事例1:昭和電工

■「イクメン企業アワード2014」にて特別奨励賞を受賞
■男性育休取得数19名(2008年)→50名(2014年)に増加

<取り組み>
・当事者が本音で語り合える「育児座談会」の開催
・家族と職場の上司・同僚などの相互理解に効果的な「家族見学会」の開催
・育休取得に関する書類を上司に手渡しし、周囲にも見える化

 全社員を対象としたダイバーシティ戦略をトップダウンで実施し、ダイバーシティ推進プロジェクト内に「働き方を変える」チームを発足。「従業員がモチベーション高くいきいきと働くには、キャリアとライフは引き離せない」と考え、両立支援(育児)中心に取り組む。特に2008年からは、従業員比率9割を占める男性社員向けに「パパキャン」と題した育休取得推進キャンペーンを展開。取得者と取得に躊躇している男性社員の精神的な隔たりを小さくする試みに、着実な成果が出ている。

事例2:三重県

■県主導の本格的な少子化対策「みえの育児男子プロジェクト」
■県庁の男性の育休取得者率16.04%、育児参加休暇取得者率90.57%と過去最高に

<取り組み>
・知事自身が積極的に育休を取得、育児期男性の上司として「イクボス」宣言
・「育児参画計画書」の実施
・配偶者の出産前に「育児休業取得予定の有無」「いつ頃、どの期間休業するのか」「上司や周囲に考慮してほしいことは?」などの具体的な内容を記載させる

 2014年から実施している「みえの育児男子プロジェクト」では男性の積極的な育児参加を後押ししている。三重県庁内で実施している「育児参画計画書」は、職員と管理職とのコミュニケーションを増やし、男性職員の育休取得の増加に大きな効果を見せているそう。県民や県内企業にも、情報発信や共同施策などを通して、「育児男子」育成の裾野を広げている。

左から、東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長 渥美由喜さん、昭和電工総務・人事部 萩原真美さん、三重県健康福祉部 子ども・家庭局次長 栗原正明さん
左から、東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長 渥美由喜さん、昭和電工総務・人事部 萩原真美さん、三重県健康福祉部 子ども・家庭局次長 栗原正明さん

 組織として、仕事面だけでなく、育児中の男性のリアルなニーズを引き出す場を設け、育休を取得しやすい職場環境を整備し、トップダウンや管理職を巻き込んだ意識改革を行うなど、本気の取り組みが成果につながっているようだ。

 続いて、安藤哲也さん(NPO法人 ファザーリング・ジャパン代表理事)、仲村教子さん(たまごクラブ・ひよこクラブ 編集統括)、渡辺大地さん(アイナロハ代表取締役/札幌市立大学助産学専攻科講師)が登壇し、渥美由喜さん(東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長)をモデレーターにパネルディスカッションが行われた。