女子御三家の合否を決める「知識量」と「スピード」

 中学受験では「入試問題は、その学校の校風が表れる」と言われます。では、3校の入試はどんな問題が出されるのでしょうか? 女子御三家に数多くの合格者を出している中学受験のプロ家庭教師の西村則康先生に、各校の入試傾向と対策を聞いてみました。

【桜蔭】
〈算数〉
緻密で正確な作業をスピーディーにこなしていく力が必要。計算問題では、計算の工夫を行ってもその後の処理が多量。文章題では複雑な条件をすばやく理解した上で、次々と処理を行っていくことが必要。途中の式や計算を書く必要があり、手際よくまとめていく手腕が要求される。

〈国語〉
50分で100点満点。説明文と物語文の大問2題となっている。それぞれの素材文・設問ともにハイレベル。社会科学的な知識が必要な内容もあり、読解のテクニックだけでは不十分。記述問題は指定文字数が多く、饒舌気味に書く練習が欠かせない。

〈理科〉
国語・算数ほど難易度は高くない。30分という短い時間で小問数が約30もあるため、立ち止まって試行錯誤する時間の余裕はない。女子中のなかでは、グラフや表を使って、現象を数量的に捉えさせる問題が一番多い。知識問題では、暗記した知識を機械的に答えさせる問題は極端に少なく、現象の因果関係や事象のつながりの知識を問うものが多い。

〈社会〉
大問3問。30分の試験時間に対して小問40問程度。記述問題が数問含まれるために早く解くことが必須。出題数は歴史2:地理2:公民1程度。近年は極端な難問が姿を消したが、事件の社会的な背景や現象のつながり、因果関係を問う。時事的な問題では社会科学的な知識が必要なものがあり、注意を要する。

【女子学院】
〈算数〉
40分の試験時間で大問が6問、小問数で24~25問程度。小問1問あたり1.5分見当で解いていく必要がある。模擬試験や過去問演習では時間配分の練習が大切となる。近年少しずつ難しくなってきたが、極端な難問はない。計算・数の性質・比・図形・特殊算とまんべんなく出題されるため、苦手単元は完全につぶしておきたい。

〈国語〉
試験時間が40分と短めであるにもかかわらず、小問が30問以上もある。考え込む時間はない。論理的文章(論説文・説明文)と随筆文の大問2問構成となっている。記号選択・書き抜き・記述問題がバランス良く配置されている。記述問題に「自由記述」はなく、文章中の言葉を利用する「抜き出し記述」または「条件記述」になっている。

〈理科〉
40分の試験時間に対して、小問数が40~50問もある。考え込んでいる時間は一切ない。問題レベルは穏当なものが多いために、合格平均点は高い。8割以上の得点は目指したい。基本知識を確実に覚えるとともに、題意に沿って素早くアウトプットする練習が必須となる。急ぐあまり、読み飛ばしをすると命取りになることがあり注意を要する。

〈社会〉
試験時間40分で解答数60~80、2015年の問題はB4用紙6枚あった。機械的に重要語句を覚えるのではなく、原因・結果・背景・関連事項を捉えながら覚える学習が必要となる。設問の文章に特徴があり、題意を素早く正確に捉える訓練をしておきたい。記号選択では“すべてを選ぶ”形式が多く、詳細な知識が必要となる。

【雙葉】
〈算数〉
難問・奇問は全く出題されない。それぞれ緻密で正確な計算力が要求される。特に小数計算が多い。「3.14を使う多角形や扇形」「速さ」「規則性」「割合・比」は頻出。問題用紙に解答欄があり、式や計算も書かせる問題が多く、普段から考え方や式を順序よく書き残す練習をしておきたい。

〈国語〉
語彙力・読解力・記述力すべてが高いレベルで要求される。漢字・四字熟語は頻繁に、筆順や敬語なども出題されることもあり、知識学習はしっかりとやっておきたい。多くの小問が記述であるために、書き慣れる必要がある。1問の自由記述以外は、文章中の言語の「言い換え」「要約」を用いた条件記述が多い。

〈理科〉
例年4単元からバランス良く出題され、決して難問というわけではないが、知識の詰め込みでは対応できない問題ばかりとなっている。実験や観察について、「考察」「方法」から始まり「表」や「グラフ」の読み取りが頻出する。計算単元の難問対策は不要だが、記述対策はしておきたい。

〈社会〉
大問数2~4問、解答箇所は30~40と穏当。また、基本的な知識を問うものがほとんどのため、高得点者が多い。地理・歴史・公民の融合問題が多く難しそうに見えるが、リード文の中にヒントが書かれている。毎年、数問は記述問題が出題されるが、基本知識を尋ねるものに限定される。