「子どもに楽しく教養を伝えられるツールがあるといいのにな」

羽生 そして、40歳(=人生時計:午後1時過ぎ)で独立を決断。インターネットコンテンツの「なるほど!エージェント」の開発を始められたわけですね。アニメキャラクターの動画で楽しく学べるコンテンツで、私も早くからチェックさせていただいていました。

行正 子どもを産んでから、「子どもに楽しく教養を伝えられるツールがあるといいのにな」と強く感じるようになったんです。受験勉強もいいけれど、その前に宇宙のなりたちとか般若心境の意味とか、もっと広く世界を知る機会が豊かになれば、子どもたちの役に立てるんじゃないかって。

 そんな夢を上司とランチを食べながら話していたら、「君がやればいいじゃない」と。やっぱり覚悟を決めてやるしかない、と心が決まって、その日のうちに退職の準備をしていました。

 上司は社内提案を想定していたようで慌てていましたが、私はものを作り出すには誰かが本気で覚悟しなければいけないという決意があったので、気持ちは変わりませんでした。制作費用は退職金と株の売却金でまかなえる範囲で。かけるお金のリミットを決めないと、工夫をしなくなると思ったからです。

羽生 受験勉強の前に興味を育てる。とても共感します。

行正 ありがとうございます。とはいっても、新しいことを始めるって“否定の連続”です。何度もめげそうになりましたけれど、覚悟を決めて地道に続けてきました。起業して8年経ちますが、最近ようやく教育ツールとしてインターネットデバイスの普及が進み始め、軌道に乗ってきた感じです。この秋からは台湾の会社と共同でのプロジェクトも始まるんです。桃栗三年柿八年とはよく言ったもんだな~と思います。