個人的に信頼できるご家族にシッターを依頼

羽生 結婚、出産されてからの働き方は変化されましたか?

行正 34歳で社内結婚して、36歳で長女、38歳で次女を出産しました。周りに専業主婦家庭が少なかった理由で、「産んだから辞める」という選択肢は私にはなかったですね。むしろ、留学期間にはベビーシッターの手を借りながら、途切れることなくキャリアを継続させていくケースを間近に見ていたので、自分もそうするのが当たり前と、長女の妊娠が7カ月のときにシッター探しを始めました。時差のある仕事で、夫も超多忙でしたから、周囲の手を借りることが絶対に必要でした。

羽生 ご主人は育児に協力的だったんですか?

行正 ほぼ毎日深夜帰りで「俺はマグロ漁船に乗っていると思ってくれ」と言われました。でも、それは私も理解できたので、納得してやってきたんです。今はイクメン賞賛の時代ですが、イクメンになれない人もその人なりに必死に頑張っているはず。要はそれぞれの家庭の事情の中でどうやっていくかということだと思います。

羽生 おっしゃるとおりですね。DUALではイクメン家庭をよく取り上げるので、「うちはそうじゃない」とかえって失望される方もいるんです。いろんな事情の家庭に活かせる情報を伝えていく姿勢は大切ですね。探されていたシッターさんはすぐに見つかったんですか?

行正 私の場合は、いわゆるプロの方ではなく、個人的に信頼できるご家族にお願いしました。アメリカでシッターの事情を見聞きしていた経験から、シッターさんに自宅に来てもらうと「親との雇用関係が子どもに見える」という問題点があると感じていました。それよりも子どもをお宅に預ける形で、家族の一員として受け入れていただき、時にはしつけもしていただくような長くお付き合いができる関係性を目指しました。

羽生 そんな方をどうやって…?

行正 家のお掃除をお願いしていた女性が、とても気持ちの行き届く方だったんです。いらしてくださる度に、ガーベラを一輪いけたり、畳まできれいに拭き上げたりと、感動をいただくことが多くて。きっとこのお嬢さんが育ったご家庭は素敵なはず!と電話をかけ、ご自宅を突撃訪問したんです。そしたら思ったとおり、素敵なご家族でした。出されたお茶や手作りのラッキョウが美味しくて、家族写真がたくさん飾られていて…。

 間違いないと確信して、すぐにお願いしました。最初は「赤ん坊を見るのは怖いよ」っておっしゃったので1時間から少しずつ。3回目には「まるで天使。孫のようにかわいがりたい」っておっしゃってくださって。今でも家族ぐるみで交流が続いています。長女は中1になりましたから、もう10年以上のお付き合いで、今でもご飯をご馳走になりにおじゃましているんですよ。