働くパパが心しておくべきことは、誰もがいつかは定年を迎えるということ。そして定年後の時間は意外に長いということです。そのときになって慌てても、急に地域や家庭に自分の居場所がつくれるわけではありません。武蔵大学社会学部助教の田中俊之さんが警鐘を鳴らします。

定年退職者の孤独は、働く男性すべての問題

 以前、団塊世代(1947〜1949年生まれ)の大量退職が、「2007年問題」として注目を集めたことがあります。一般的には、彼らが蓄積してきた仕事上の知識や技術の継承などに関心が集まりました。つまり、この問題は経済的・職業的な側面から論じられていたわけです。

 しかし、男性学の視点から見ると、「2007年問題」の別の側面が浮かび上がってきます。仕事中心に生きてきた団塊世代の男性達が定年を迎えて、職場から家庭や地域に生活の場を移す際に出てくる問題が、男性学的な意味での「2007年問題」です

 中学や高校時代に熱心に部活に励んだ男性は多いと思いますが、部活から引退したときには生活にハリがなくなり、ぼんやりとしてしまったかもしれません。わずか3年でもそうなのですから、週休1日だった時代に働き始め、40年間にもわたって仕事に従事してきた団塊世代の定年退職者は大きな喪失感を抱くことになります。

 加えて、それだけの期間、仕事中心の生活をしてきた結果、地域に友達はいませんし、家族との関係もぎくしゃくしてしまいがちです。ですから、定年退職後は、仕事を無くした喪失感に加えて、地域や家庭での居場所づくりという課題に向き合うことになります

「働いてさえいればいい」と開き直っているパパは、定年退職した男性と自分の違いは、仕事があるか無いかだけだと自覚しなければなりません。働いているから、失っているものに気が付かないだけです。定年退職者の孤独は、すべての働く男性が当事者として考えなければならない問題であることを理解してほしいと思います。