最近よく耳にする「リノベ」という言葉、ご存じですか。最近、若い世代を中心に、住まい選びの選択肢として注目されている「リノベーション」の略語で、築年数の経った家の間取りや内装を一新し、新築並みの住まいに再生する手法です。「リフォーム」と混同されることも多いですが、リフォームとの違いは「住む人が世代ごとに替わる」場合が多いこと。「既存の住宅を購入する」「親の家を引き継ぐ(2世帯住宅に変える)」ときに、生活や子育てがしやすいリノベーションを行うDUAL世帯も増えています。
 新築に比べリノベーションのメリットとしてあげられるのが費用を低く抑えられる点ですが、それ以外にも子育て世代にとって見逃せないメリットがあります。実際にリノベーションされた住宅を訪れ、どのように生まれ変わったかを確認しながら、リノベのメリットを見ていきましょう。

25年前の家なのに外観も内装も新築と変わらない

 築年数の経った家の間取りや内装を全面的に新しくし、新築並みの住まいに再生する「リノベーション」が注目されている。かつて建てた住まいをリノベーションし、販売する事業を手掛けているのが積水ハウス。実際にリノベーションされた住宅を訪れ、総合住宅研究所の河崎由美子課長に話を伺った。

 今回訪れたのは松山市の中心街から車で10分ほどの「グリーンヒルズ湯の山」。積水ハウスが1986年から分譲を開始した約1000世帯におよぶ住宅地だ。整然と区画割りされた街では今も新築住宅の分譲が続いており、交通アクセスの良さと緑に囲まれた住環境から子育て世代を中心に高い人気を維持しているという。今回訪れたリノベーション住宅は、その閑静な街の一角にあった。

 ベージュとこげ茶を基調とした外観は新しく塗装され、とても25年前に建てられたとは思えない。さらに家の中に入ると内装も真新しく、ほとんど新築と変わらない空間だ。

リノベ前のリビング。右奥に見えるのがキッチンスペース
リノベ前のリビング。右奥に見えるのがキッチンスペース

リノベ後のリビング。窓やキッチンの位置は変わっていないが、印象はまったく異なる
リノベ後のリビング。窓やキッチンの位置は変わっていないが、印象はまったく異なる

 壁や天井のクロスはもちろん、床も既存のものに新しい床材が貼られている。従来の家にはなかった床暖房も備えるという。

「床を重ね貼りすると床材の厚みの分だけ天井が下がりますが、最近は薄くて耐久性の高いリフォーム専用の床材が開発されており、床暖房を設置することも可能です。また築20年以上の建物は、今の新築に比べて窓が小さめですが、天井に間接照明を付けるなど工夫することで、開放的な空間を実現できています」(河崎さん)

リノベ前のリビング。窓の大きさや照明などが時代を感じさせる
リノベ前のリビング。窓の大きさや照明などが時代を感じさせる

天井に間接照明を付けるなどして、窓の大きさを変えず、開放的な空間を実現している
天井に間接照明を付けるなどして、窓の大きさを変えず、開放的な空間を実現している

 たしかに窓枠などは建てられた当時のままだが、古さは感じられない。以前はカーテンレールも露出している状態だったそうだが、下がり天井で隠すなどインテリアにも工夫が見られる。

以前は露出していたカーテンレール(左)を、リノベ後は下がり天井で隠す(右)などの工夫も
以前は露出していたカーテンレール(左)を、リノベ後は下がり天井で隠す(右)などの工夫も

「この住まいは若いファミリーを意識しているので、特にインテリアを重視してプランニングしました。キッチンとダイニングをゆるく仕切るカウンターは木の素材感を大切にしたデザインとし、ダイニングの窓辺にも無垢の木でテレビ台と一体化したベンチを設けています。木のぬくもりを感じながら家族で集まってくつろげる“カフェダイニング”がコンセプトです」と、河崎さんは狙いを話してくれた。

若いファミリーを意識しインテリアを重視。木のぬくもりを感じながら家族で集まってくつろげる“カフェダイニング”がコンセプトだという
若いファミリーを意識しインテリアを重視。木のぬくもりを感じながら家族で集まってくつろげる“カフェダイニング”がコンセプトだという

ダイニングの窓辺にも無垢の木でテレビ台と一体化したベンチを設けている
ダイニングの窓辺にも無垢の木でテレビ台と一体化したベンチを設けている

古いリビングと比べてみると窓やキッチンカウンターの基本的な構造そのままに、イメージを大きく変えたことがわかる
古いリビングと比べてみると窓やキッチンカウンターの基本的な構造そのままに、イメージを大きく変えたことがわかる