イクボス的視点を業務に活かす

 子育てに厳しい状況を、自社の業務やサービスに反映している企業が多いのも、ベンチャーならでは、かもしれません。

 「パラフト」は、多様な働き方を選択できる転職・求人メディア。代表取締役の中川亮氏はもともとフリーのエンジニアやデザイナー、マーケッター向けに、週2日から、といった仕事をマッチングする「プロシート(PROsheet)」というサービスを展開してきました。さらに人材の流動化を考え、「転職という切り口で、大企業でなくてもパパに優しい企業があること、また、多様な働き方ができることを広めたい」とパラフトを開始したそうです。スキルによって、正社員でも自宅勤務OKとか、週3日出社といった多様な働き方ができるので、育児や介護、研究や勉強を継続したい人にうれしい転職情報が掲載されています。

 「AsMama」は、地域で子育てをしていこうという地域間の共助コミュニティサービス。リアルなイベントを通じて友達を増やす場作りや、送り迎えなどの子育てをシェアするサービスを全国で展開しています。アズママというとママのためのサービスと思いがちですが、“ママ業”をサポートするという意味。活動を支えるのはママサポーターの人たちですから、イクボス的な視点は欠かせません。代表の代理で出席した情報発信部 人メディアチーム主任の内山茜氏によると「地域の子どもたちを集めて遊ばせるといったシーンでは、ママをしのぐ大活躍パパも」いるそうです。今は子育て中心ですが、今後は介護などにも助け合いを広げていきたいと考えているそうです。

 「おかん」は、オフィスの中に冷蔵庫や専用ボックスを置いて、添加物を使用していないお惣菜を届ける一種の社食サービス。置き薬やグリコの置き菓子のごはん版みたいなサービスですが、中には、自分が社内で食べるだけではなく、この惣菜を買って帰って、家族や子どもの食事にしている例もあるそうです。代表取締役の沢木恵太氏は「働く環境が良くなればという思いでサービスを展開している」そうで、「今後はフードだけでなく、家事を含めたさまざまなワークライフバランスをサポートするような福利厚生も考えていきたい」としています。

 このように、イクボスITベンチャー同盟の参加企業はどこも、イクボス的視点で業務運営やサービス提供をしています。こうした企業間の交流から、また新たなワークライフバランスに配慮した新サービスがでてくる可能性も大いにあります。

イクボスは福利厚生ではなく経営戦略

 キックオフイベントに続き、6月13日に開催された「ITイクボスフォーラム ~新しい働き方を考えよう~」では、参加者からは「上司にイクボスになってもらうにはどうすればいいか」といった質問がありました。安藤氏や川島氏からの回答は「イクボスは福利厚生ではなく経営戦略」というもの。「みんなが定時に帰宅すれば、労働生産性が高まる。それには、上司や上の世代の男性にも、早く帰りたいという動機付けが効果的。趣味ややりたいことを引き出しつつ、ワークライフバランスが悪いと職場も家庭も不利益だということを理解してもらうのが大事。会社だけでなく社会全体で意識を改革・共有していく機運を高めていきましょう」


6月13日に開催された「ITイクボスフォーラム ~新しい働き方を考えよう~」

 FJでは、IT業界を皮切りにほかの業界や、企業規模での横断組織として中小企業同盟といった展開も予定しています。自分の社内でも、理解がありそうな仲間を募って参加してみるといいかもしれませんね。

(取材・文/波多野絵理)