変革はシンプルに。「なぜこの場に男女が半々でいないのか」

損保ジャパン 櫻田さん

 私は本当に変革を引き起こしたいのであれば、シンプルにならなくてはいけないと思っている。壇上で話をする機会があるときは、必ず「なぜこの場に男女が半々でいないのか」という質問をします。リーダーは組織の中で女性がきちんとある数値に達しているかということを確認する必要がある。私は本社の女性スタッフに向けたスピーチで、「なぜ優秀なスタッフであっても、キャリアを追求しようという心を抑えてしまうところがあるのか」と問いかけました。そして、意識が大事であると話しました。

サイボウズ 青野さん

 日本での男性の育児休暇取得率はわずか2.3%。以前大きな電機メーカーに勤めていたから少し気持ちがわかるのですが、取るのが怖いんです。まわりが誰も取っていない中で、このまま会社に勤められるのか不安になる。それをブレイクするにはどうすればいいかと考え、2010年に子どもが生まれたので育児休暇を取ってみることにしました。第2子のときも取り、今年の1月に第3子が生まれたので、今は時短勤務中です。これによって、サイボウズという会社では男性もこういう働き方をしていいんだというロールモデルができる。トップが率先垂範することで風土は変えられると思います。

 今回登壇したリーダーが率いる企業は、いずれも女性参画の重要性をトップが認識し、積極的にダイバーシティを進めています。しかし社会全体を見渡してみれば、こうした恵まれた職場はまだ少数。厳しい環境で働く多くの女性達に向けてのアドバイスもありました。

LIXIL 藤森さん

 どこでも変化を起こすことは可能です。自分を信じ、自分から始めるんだという心構えを持ち、あえて居心地の悪いところまで進み、それから経営者側を説得する。なかなか応じないかもしれないし、皆さんシャイで声をあげるのが苦手かもしれない。でも「これができるんだ」という信念さえ持てば、いつかどこかで変化が起きると思います。最終的には皆さん次第。自分の運命をコントロールしてください。

損保ジャパン 櫻田さん

 成功という言葉は個人の価値観に基づくもの。それを踏まえたうえで、女性がキャリアを磨くことを一つの成功の定義だとした場合、私が知っている女性役員はレッドオーシャン(競争の激しい世界)をタフに生き延びた人、もしくはブルーオーシャン(未開拓の世界)を見つけて乗り込んでいった人の二つに分かれます。後者はレッドオーシャンにあえて航海せずに、第三の道を見つけていくセンスのよさが求められますが、個人的な経験から言うとそれは女性の方が長けているかもしれません。

 キャリアとして成功したいのか、そうではないのか。自分の意識が今どこにあるのかというところを確認してみてください。

 次回は、自らも女性リーダーとしてキャリアを築いてきたACCJのジェイ・ポナゼッキ会頭に、日経DUALの羽生編集長がインタビューします。

(取材・文/谷口絵美、撮影/鈴木愛子)