子育ては周囲の人たちの人生も豊かにする

 子どもって、親が育てているように見えて、実は親だけではない、たくさんの人たちに育てられていますよね。

 わが家は、奥さんも一緒にスタジオ地図の運営と経営をしてくれていて、2歳の娘を育てています。でも、どんな仕事も同じであるように、僕ら映画制作の場合も、なんとか子育てと仕事を両立出来ているのは、両親や保育園、そして職場の多くの人たちに協力があって、みんなに娘を育ててもらっているからなんですね。

 九太も、熊徹だけでなく、百秋坊や多々良、そして楓など、たくさんの人たちに育てられた。それこそ、僕なんかはアニメや映画に詳しかった高校の同級生に、いま自分がこうしてアニメーション映画に携わるきっかけを作ってもらったんです。子どもの成長には他者との出会いや、いろいろなかたちをした師匠との出会いが必要なんだと思うんですね。

 また百秋坊や多々良のように、よってたかって子どもの成長に係わっていく中で、知らない間に、自分自身もその子どもの成長から大切なことを学んでいたり、ある種、擬似的な子育てを通して、人生の醍醐味やその豊かさ、そしてかけがえのない時間や経験をも得ることだって出来るのかもしれない。

 だからこそ、我々大人がもっと積極的に子どもの成長のプロセスにかかわって、その成長をみんなで励ましてあげるべきなんじゃないか、その成長を祝福し、賛歌してあげるべきなんじゃないかと思うんです。

見終わった後、親子で話してほしい


写真/大橋宏明

──確かに、あるゆる世代の人が見て楽しめる映画だと思います。幼稚園や保育園に通うぐらいなら一緒に見に行けるでしょうし、小学生ならハマるでしょう。高校生ぐらいになって親と距離ができて別々に見たとしても「俺、見たよ」「どうだった?」みたいな話ができる。特に『バケモノの子』は、親との会話が触発されるかもしれませんね。

『おおかみこどもの雨と雪』の公開後、「映画を観た後、久しぶりにお母さんに電話をしました」「観終わって家族で食事に行って、自分の子ども時代の話をみんなとしました」といった感想やお手紙を沢山いただき、映画にとって、本当にこの上ない幸せな経験をさせて頂きました。

 細田監督は、いつも映画は沢山の人たちが集える公園の噴水広場のような、公共の利益に適うべきものでありたいと思っています。そして映画を観終わった後に、みんなで美味しいご飯が食べられる、そんな映画を作りたいと思っている監督です。この映画が観客の皆さんお一人お一人にとって、この夏休みの思い出に残るような、幸せな出会いとなることを心から願っています。今日は本当に、どうもありがとうございました。

(取材・文/波多野絵理)

■細田監督の映画についてもっと知りたいひとは……
『細田守とスタジオ地図の仕事』
日経エンタテインメント!著/日経BP社

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