変容する社会の中、どう子どもの成長を励ますか

――齋藤プロデューサーは細田監督とこれまで二人三脚で映画を作ってきました。お子様の年齢も同じパパ仲間でもあります。大人から子どもまでどの世代の人も楽しめる『バケモノの子』ですが、子育て真っ最中のDUAL世代にとって、一番の見どころを教えてください。

 この映画は、夏に少年が不思議なものと出会って一緒に冒険をし、そして一皮むけて、大人になる。それは僕ら大人が子供時代に胸躍らせた、親子で一緒に楽しめる夏のアニメーション映画の王道にチャレンジした作品でもあります。そこに現代性と到達可能な理想を持って、「子どもの成長」を祝福する映画を作りたいと思いました。

 細田監督はこれまでも自身の家族で起こっている喜びや問題意識を映画のテーマやモチーフにしてきました。そして、その喜びや問題意識を世界中の人達と映画を通して共有出来たらと思っている。そんな監督が『サマーウォーズ』(2009年公開)以降、ずっと描き続けてきたものが「家族」なんです。

 例えば前作『おおかみこどもの雨と雪』(2012年公開)は、子育てをするお母さんが主人公でした。子どもを育てる家庭環境はいろいろでも、世界中の誰もがお母さんから生まれてくるという体験は共通のもの。そのお母さんがしている子育てという「偉業」を、もしかしたら多くの人が「当たり前」のことと思っているのかもしれない。だからこそ、そんな身近にいる“お母さん”を主人公に映画を作りたいと監督は思った。それは前々作『サマーウォーズ』の制作途中に他界された監督自身のお母様の死を通して「母への想い」、そして「いつか自分も親になりたい」という願いが、『おおかみこども』という映画を作る動機になったのでした。


細田監督と二人三脚で映画を作ってきたアニメーション制作会社「スタジオ地図」の齋藤優一郎プロデューサー

 その後、監督は『おおかみこども』公開後に男の子を授かりました。わが家もその後、女の子が生まれたのですが、そこで監督が思ったのは、「この子はこれからどうやって大きくなっていくのだろうか」「父親として自分は何ができるのか」ということ。また、我が子の成長を見つめる視点を通して世界を見たとき、「変容する現代社会の中で、どういうふうに子どもを育てていくべきなのか。どのように私たち大人や社会が、子どもたちの成長と未来を励ましてあげられるのか」といった様々なことを考えていたように思います。

 映画『バケモノの子』に登場する熊徹と九太は、本当の親子ではありません。ただ、いつも罵りあい、一緒に食事をし、互いを知っていく過程の中で、二人は共に成長し、いつしか本当の親子にも負けない絆を育んでいきます。そして九太の周囲には、ある種、社会の縮図とも言える沢山の大人たち、人生の師匠たちとの出会いと励ましがあって、みんなに育てられ成長していくのです。

 この映画では、少年の成長物語であると同時に、親やそれを取り巻く社会がどのようにこれからの子どもたちの未来を考え、共に成長していくべきなのか、そんなことを僕は感じ、考えさせられました。