東京をはじめとする首都圏にはここ数年で、多くの民間学童保育が誕生しました。東急の「キッズベースキャンプ」が先駆けとなり、小田急電鉄や京王電鉄など鉄道各社が沿線に施設を整備。学習塾なども多くの施設を開校しています。

 一方、関西では関東ほど、民間の施設は多くないのが現状。それでも最近になって、いくつかの企業が学童保育事業に本格進出し始めました。「民間学童の夏のプログラム」特集、最終回の今回は関西の2社が運営する「アフタースクールKippo」と「トレジャーキッズクラブ」を紹介します。公設と民営のニーズの違いなど、大阪の学童保育事情についても探りました。

電車の整備工場や宝塚の職人訪問。日帰りで飯ごう炊飯

■アフタースクールKippo■

 阪急電鉄が今年4月に大阪・豊中に開業した「アフタースクールKippo」。阪急豊中駅に直結して施設があります。ここでは1年生を中心に20人ほどの小学生が、放課後の時間を過ごしています。

 開業に当たり、東京のキッズベースキャンプ(KBC)から運営・安全管理等に関する支援・協力を受けたといい、施設に入ると、明るく穏やかな色調の室内、転んでも痛くなさそうな木の色の床など、KBCに似た雰囲気を感じました。

 「私自身も小学校高学年の子どもが2人いますが、子どもが小学校に入学したころにはまだ『学童保育』という言葉は、そこまで皆に認知されていませんでした。子どもが夕方5時には帰ってきてしまう時代だったので、祖父母に預けるなどして仕事から帰るまでの時間をつないでいました」と話すのは経営企画部課長の松本美樹さん。この2年ほどで、大阪でも公設学童が充実してきており、学童保育の認知度やニーズが向上。民間学童も市場拡大の機運が出てきたといいます。

 Kippoは今年、初めての夏休みを迎えます。阪急阪神グループや沿線の団体と連携して特別プログラムを用意します。沿線ならではのネットワークを活かしたものが多いのが特徴です。

Kippoの夏休みプログラム
Kippoの夏休みプログラム

 例えば「阪急電車のひみつ 正雀工場を探検しよう!」では、阪急電鉄の整備工場で電車の整備、清掃の様子などを見学。電車に乗ったまま専用の洗車機を通る迫力満点の洗車体験などを経験します。「Kippo青空サイエンス」では科学実験のプロである大学の先生と一緒に、科学に興味が持てるようなプログラムを実施します。

 また「日本一の里山」とも言われるという能勢妙見山を訪ね、クヌギの木など自然を観察。昼食は飯ごう炊爨でお米を炊く経験もします。他にもプロの棋士に囲碁を習ったり、駅に置いてあるフリーペーパーの記者体験をしたりと、学校ではなかなか体験できないような内容が盛りだくさんです。

妙見山ではお米を炊いたり、ピザを作ったりして楽しむ(Kippo)
妙見山ではお米を炊いたり、ピザを作ったりして楽しむ(Kippo)

 「普段の活動もそうですが、子どもの興味・関心を引き出すことを一番、重視しています。夏休みは共働きの家庭が一番困る時期で、『特別なことをさせてあげたい』というニーズも高い。公設学童ではなかなか経験できないようなことを、楽しんでもらいたいと思っています」と松本さんは話しています。