日経DUALから発売する住宅ローンの悩みを解決する書籍『住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(中嶋よしふみ著)の内容を紹介していきます。

 本書は、住宅購入・ローン返済でよく言われる「マイホームの予算は年収の5倍まで」「頭金はとにかく入れる」「繰り上げ返済はなるべく早く」などの従来の「常識」とは異なる新たなアドバイスをお伝えします

 第1章第3章の紹介に引き続き、今回は第4章「ローンの繰り上げ返済どうする? 〜『早く終わらせたほうが得』は間違いです〜」の一部を紹介します。これから家を買うご夫婦と、住宅ローンを返しているご夫婦、どちらにも役立つ内容です。

<第4章の主な目次>
●繰り上げ返済にもデメリットがある
●年収が高くても繰り上げ返済は危険
●繰り上げ返済は先送りしてもいい
●金利が上がっても慌てなくていい
●繰り上げ返済で得するのは数十年後

【第4章】得するだけではない、繰り上げ返済にもデメリットがある

「繰り上げ返済はなるべく早いほうがいい」と思っていませんか。実は、その常識を疑ったほうがしあわせになれます。

 住宅ローンの相談に乗っていると、ほとんどの方が借り入れの前から繰り上げ返済も含めて返済を考えています。これ自体は計画的でいいことなのですが、繰り上げ返済のデメリットを考慮していないケースが少なくありません。というか、ほとんどの方は繰り上げ返済のデメリットを考えていません。

 繰り上げ返済をすれば利息負担が減る……これ自体は間違いではありません。早く繰り上げ返済をするほどよりたくさんの利息負担が減ることも間違いではありません。ただ、それによって発生するのが資金繰りの悪化、つまり手元のお金が大幅に、なおかつ長期間にわたって減ってしまうというデメリットです

 私は「家計は企業と同じように考えるといいですよ」といつもアドバイスをしています。企業がつぶれるときは赤字になったときではなく、手元にお金がなくなって支払いができなくなったときです。これは家計でも同じです。貯金さえあれば失業して収入が減っても、病気で支出が増えても耐えることはできます。繰り上げ返済はその生命線とも言える貯金を、利益と引き換えに大幅に減らすことです

 損得よりリスクを優先する、という原則から考えれば、繰り上げ返済で利息を減らすより、家計の支払いがストップしないように貯金の確保を優先すべきです。ぜひこの点を忘れないでほしいと思います。この章では具体的な例を見ながら、安全な繰り上げ返済の仕方についてお伝えしたいと思います。

 なお、繰り上げ返済のシミュレーションは「知るぽると」(金融広報中央委員会)というウェブサイト上で簡単にできますので、試してみてください。

【ポイント】
 繰り上げ返済では利息を減らすことより、手元に資金を残して支払いがストップしないようにするほうが重要です。「損得よりリスク」の原則は繰り上げ返済でも変わりません。