私が幼稚園教諭をしていたころ、年長さんに「どこの国の王様になってみたい?」と聞いたことがあります。すると、「アメリカ!」と言った子がいました。「なんで?」と聞くと、「アメリカって大きいんだよ」と言うので、「どれくらい大きいのかな?」「どうやってアメリカに行くの?」と聞くと、「知らなーい」と言うので、「えー! 知らないのー! 調べてみる?」なんて言うと、一生懸命調べてきて、翌日私に教えてくれました。

 その子は「アメリカってどんな大きさなんだろう、日本とどれくらい違うんだろう…」と、大人の言葉かけによって、頭の中が想像力に溢れ、知りたくて仕方のない状態になっていたはずです。

 どうしても意欲がないという子もいます。意欲がある子と何が違うのでしょうか。

どうしても意欲が出ない子 その理由は?

 私がこれまで6000人以上の子どもに接していて感じるのは、早い段階で好奇心・意欲に個人差が生まれるということです。保護者の方に生活の様子を聞いていると、興味・関心を持って取り組めていない、エネルギーが足りていない子は、生活習慣が乱れているということが分かってきました。

 たまには、1時間ご飯が遅れたり、お友達が来て楽し過ぎて、睡眠時間が遅れるということもあると思います。でも、小さな子ども達にとっては、できる限り、毎日同じ生活リズムで動くことが大切です。人間は、安心したい生き物。安心している人の側にいたいし、安心して見守ってもらえるなかで思いっきりはしゃぎたいものなのです。

 そういった「安心できる気持ち」を、圧倒的に保障してあげられるのが、生活リズムです。「お母さんやお父さんは、自分は起きていたくても毎日同じ時間に寝かせてくれる、自分のことを差し置いてご飯を食べさせてくれる…」。そういったことの積み重ねが、無意識のなかに「尊ばれたんだ」と思える気持ちとして根付いていきます。

生活リズムが乱れた大人(親)は子どもと遊べない

 何かテーマを与えてみんなで取り組んでみるシーンでも、あまり関心を示さず、周りの子が熱中している様子をまるで他人事のように眺めていることが多い場合には、まず、生活習慣の乱れを整えてあげましょう。これには、親の努力も必要です。自宅に仕事を持ち帰らないようにしたり、パパに協力をお願いしたりするなど、調整しなければならないことも出てくると思いますが、幼児期の子どもは、親が頑張ってくれた努力をまるでスポンジのように吸収して変わっていきます。

 生活リズムがちゃんとしていない人は、意欲があったとしても、自分の思うように体をコントロールできず、大きな成果を導きにくくなっていきます。元気が出ずに風邪を引きやすいときや、イライラしたり、忘れ物が多かったり、余裕がないことをしたりして自信がなくなっているママがいると、生活習慣が崩れているのかな? と思います。

 週末に遊べない親、子育てをする意欲が出ない親の皆さんの話を聞いていると、ちゃんと眠れているかな? と心配になることも多いです。親の生活習慣が乱れていると、子どものエネルギーに負けてしまうんですね。

寝る時間の早さより「毎日同じリズム」が大事

 ただ、仕事と子育ての両立で忙しいDUAL家族が、早い時間に寝るなんて難しいですよね。例えば、「わが家は(周囲と比べるとちょっと遅いけれど)22時に寝るというルールを前提に、それだけは死守できるように頑張っている」ということでもOKだと私は思っています。DUAL世代の皆さんは、子どもが寝静まってからやることも多いのですから、パパやママが無理をしては本末転倒です。

 体にエネルギーが戻ってきたら、少々忙しいときや大変なことがあるときでも踏ん張りが利くようになります。親から与えられた生活習慣は一生もの。意欲とも連動しています。子どもが1歳ぐらいになり、まとまって睡眠を取れるようになってきたら、生活リズムの整え時です。親自身の生活リズムも一緒に見直しましょう。

 時には、家事を手放し、勇気を持って仕事を諦めて明日に回しましょう。まずは、何より体調優先です。子どもと一緒に成長していきましょう。