育児で社会から孤立してしまう母親たち

 仕事をしたいと思う理由として二番目に挙がったのは、「社会と関わり視野を広げたい」(69%)という回答です。これは、裏を返すと、出産後の女性は育児で孤立してしまうという問題が見えてきます。

 日本で児童のいる世帯は1208万5千世帯。その中で核家族が占める割合は約8割となっており、その内ひとり親の世帯が7.5%を占めています。サザエさんのように三世代で一つ屋根の下に住んでいる家族は10世帯中のうち、1~2世帯とごく少数派です。(平成25年国民生活基礎調査)

 一昔前は、奥さんが専業主婦で旦那さんの帰りが遅くても、一緒に住むおじいちゃん、おばあちゃんに家事や育児を助けてもらうことができました。また、近所との関わりも今より濃密で、子どもたちが悪いことをしていたら近所のおじさんが叱るといった光景も珍しいものではなかったでしょう。

 しかし、現在は家事、育児をひとりで抱え混んでいる母親が増えています。マンションの隣にどんな人が住んでいるか分からず、乳幼児の子育て中は一日誰とも話さず終わってしまうということも少なくありません。

 子育て中は、ちょっとした悩みを話せる相手がいることが、大切です。子どもの夜泣きがひどい、ごはんをあまり食べない、自分の体調が悪くて外遊びに連れて行ってあげられない……このような不安を抱えた時に相談できる相手がいないのは、とても心細いものです。

 このような状況をふまえると、現在の保育園や保育サービスは、単なる子供を預かる場所ではなく、昔のおじいちゃん・おばあちゃんのような大きな役割を果たしていることがわかります。

 しかし、保育園は基本的に母親が働いていないと入園することができません。幼稚園は早くて3歳、公立の場合は4歳からの入園となります。その間、親が遠方に住んでいる、旦那さんの転勤で近所に知り合いがいないといった場合に母親はどうしても孤立してしまうケースが多いのです。

 経済的不安に加えて、育児期間中に社会から置いていかれるような不安・焦燥感を女性が抱えていることも、働きたいと思う大きな理由になっているのです。